【現地ルポ】大阪・関西万博、閉幕まであと3日 混乱と熱気の中で見えた”未来の光” by 石山茶梨亜(Charialshiyama)

【現地ルポ】大阪・関西万博、閉幕まであと3日
混乱と熱気の中で見えた”未来の光”
取材·文:石山茶梨亜(Charialshiyama)
撮影:CHARIA ISHIYAMA
出典:日本国際博覧会協会公式発表(2025年10月9日時点)

▪️午前3時から始まる”長い一日” 閉幕まで残り3日。
大阪・関西万博(夢洲会場)は、いまだかつてない熱気と混乱の中にある。
取材班は7日、8日、9日の3日間、連続で現地を取材した。
午前3時にはすでに長蛇の列。
夜明け前の夢洲に、期待と不安を胸にした来場者たちの姿があった
開演直前、ゲート前では人々が押し合い、叫び声があがる場面や、子供が泣く姿。一部では転倒やけがも発生する場面もあった。

▪️“人の奔流”のような開場直後
午前9時、開演のアナウンスと同時にゲートが開く。
その瞬間、波のように動き出す人の群れ。
人気パビリオンを目指す人々が駆け出し、取材班もその流れに合わせて急ぎ足で進んだ。
最初のパビリオンは45分待ち、次に訪れた施設では90分待ち。
午後になると多くのパビリオンで入場規制がかかり、「並んでも入れない」という声があちこちから聞こえてきた。

▪️裏で動く「チケット経済」-ー最終日は10万円超え表の熱狂の裏では、もうひとつの市場が動いているチケット流通センターでは、入場予約付きチケットが1枚相場で3万5,000円で取引。
人気のイタリア館予約済みチケットは2万円前後、そして閉幕日の10月13日 なんと10万円超えの取引も確認された。(10月7日のデーター)
10月10日現在では最終日のチケットが1枚40万円で、売り出されている。
正規チケットを持ちながら予約が取れずに入場できない人。
そして、高額チケットを購入してスムーズに入る人。
同じ「未来」を見るために並んでいるのに、そのスタートラインはあまりにも違う。
SNSでは「チケット格差」「入れない万博」「万博チケット死に券」といった言葉がトレンド入りし、理想の万博が”経済格差の象徴”になりつつある現実が浮かび上がる。

▪️それでも、美しかったーー大屋根リングの夜景

だが、混雑と混乱の中でも、この会場の美しさは確かに存在した。

パビリオンの外観はそれぞれがアートのようで、造形、色彩、光の使い方、どれをとっても壮観。外から眺めるだけでも十分に価値がある。中央に位置する大屋根リングはまさに象徴的存在だ。
昼は海風に揺れる白いアーチが空を切り、夜には光が流れ、未来都市のような幻想的な光景が広がる。

照らされた笑顔、カメラを構える人々、そして「来てよかった」とつぶやく声。
その一つひとつが、この万博の”本当の姿”を物語っていた。

「チケットは取れなかったけど、外観を見るだけで満足でした。」
ー来場者の声より

▪️“予約なし”でもまだ楽しめる希望
万博終盤、予約システムは飽和状態。しかし、すべての楽しみが閉ざされているわけではない。会場内には予約不要のパビリオンや体験ブースも多く、並べば今でも十分に体験できる。
取材班も偶然立ち寄った無予約ブースで、各パビリオンの国の文化や展示に出会うことができた。

「行列の合間に見つける”空き時間の宝探し”」ーー
それは、混雑の中にこそある、小さな発見の喜びだ。

▪️夜の帰路ーータクシー90分待ち、地下鉄は前進できず

午後8時。
取材班が会場を出ると、そこにもまた”行列”があった。
タクシーは予約なしで最大90分待ち。
地下鉄夢洲駅では人があふれ、改札を抜けるまでに1時間以上。
構内の通路では人が立ち止まり、前に進むのも難しい状態だった。
それでも、人々は笑っていた。
「混んでても、この夜景を最後まで見たかった」
そう話す女性の頬に、万博の光がやさしく反射していた。

▪️外国人よりも日本人が圧倒的に多い理由
会場を見渡すと、来場者のほとんどが日本人。外国人観光客は意外なほど少ない。
「予約システムが複雑で、海外からは利用しづらいという声が、現場でも複数聞かれた。
それでも、会場では英語・中国語・韓国語の案内を頼りに
笑顔で写真を撮る外国人の姿もあり、小さな交流があちこちで生まれていた。

▪️27日連続で20万人超え、累計2,444万人突破
博覧会協会の発表によると、10月8日の来場者は23万7,000人(うち関係者2万4,000人)。
一般来場者は21万3,000人で、27日連続の20万人超えを記録した。
開催179日間の累計は2,444万人、関係者を含めると2,775万人に達している。
10月9日 来場者数 関係者含め23万2000人。
閉幕直前にもかかわらず、勢いは衰える気配がない。

▪️混乱の中に見えた”希望”
大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。

だが、終盤の現場にあったのは、チケット格差、予約システムの混乱、交通の逼迫ーー。

理想と現実の狭間で、人々は懸命に”未来”を見ようとしていた。
それでも、大屋根リングの下には笑顔があった。
疲れた表情の奥に、希望の光が確かに宿っていた。
混雑も不便も、すべては「未来をこの目で見たい」という熱意の証なのだ。
万博はまもなく幕を閉じる。
けれど、夢洲の夜空に浮かぶ光の輪は、訪れた人々の心に*”未来への記憶”*として、静かに残り続ける。


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