12月13日公開『武士の献立』映画批評 by 吉田衣里

12月13日に日本全国で上映される上戸彩・主演の映画『武士の献立』について、抱腹絶倒のギャグを芝居にすることで評価が高いCineaste・脚本家・演出家の吉田衣里『げんこつ団』団長が推敲して前回批評に続いて、新たに同映画を論じてくださった。
その鋭い批評を ここに一気に掲載する。

題名:「面白いほど物足りない」という逆説的命題の答えは?
映題:武士の献立
筆者:吉田衣里『げんこつ団』(団長・Cineaste・脚本家・演出家)
詳細:げんこつ団(http://genkotu-dan.official.jp)

題材とストーリーがとても興味深く、観てみたら実際面白いものの、何かちょっと物足りない。そんな、いわゆる大衆向け娯楽作品に最近よく感じてしまう感覚を、この作品にも感じてしまった。
大衆映画は誰にでも分かりやすくなくてはならない。しかし題材やストーリーが面白く興味深いほど観る者の想像力は自然と膨らむ。しかし大衆映画はその想像を飛び超えたり裏切ったりは出来ない。よって、膨らんだ想像力は満たされきらない。
そういうことなんだろうと思う。面白いほど、物足りない。つまりは、面白かったのである。
目新しく素晴らしい素材を使って名のある料理人が監修したファミレスディナー。そういったものなのかもしれない。それは子供でも食べやすいし誰にでも美味しい。しかしそうなると、同じ素材を使った同じ料理人によるこだわりの一品料理にも興味が沸いてしまう。それは好き嫌いの別れる味なのかもしれない。しかしむしろそれが食べたいと思ってしまう。
最近、大衆映画においてよく感じる、”面白いほど物足りない”という現象は、そういうことなんだろうと思った。つまりは、面白かったのである。


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