横浜市長選挙に出馬予定の田中康夫・元長野県知事インタビュー!3時間にわたる白熱教室

2021年 7月25日午後、各国大使館なども多い麻布十番の、庭園も美しい国際文化会館の一室で、田中康夫氏(横浜市長選挙に立候補予定)の特別記者会見が、日仏共同テレビ France10により開催されました。

数名のフリージャーナリスト、書籍編集者、雑誌記者、インディペンデント・ジャーナル紙が田中康夫氏を至近で囲み、自由な語り口で、実にたっぷりと3時間を確保しての記者会見でした。今回の横浜市長選挙は、現在迄に10名が立候補を表明しており、新旧入り乱れ、経歴も様々で、自民党の分裂選挙になるとの見通しもあり、大変注目を集めています。

去る7月8日に、横浜山下公園に臨するホテルニューグランドのレインボーボールルームで、田中康夫は大勢の記者に囲まれて、やはり時間を極力制限しない、記者会見にあるべき姿で、人間的余裕を感じさせる出馬会見を1時間45分行っています。

(7月8日 会見動画@ホテルニューグランド https://www.youtube.com/watch?v=0mKlPBwh9Xo )
その場所を選んだのにはメッセージがありました。日仏共同テレビFRANCE10は、今一度、その場所を選んだ意味を確かめる質問をいたしました。

当時東京市の5分の一の人口だった横浜市で2万5千人も犠牲となった関東大震災後の瓦礫で埋め立てられた山下公園に、街の人々が共同出資してモニュメントの様に作られたのがホテルニューグランド。鎮魂の地であった山下公園の先に享楽的なカジノを誘致するのは、些か無神経ではあるまいか?4â月12日の誕生日に横浜市民となった新参者の自分は横浜の歴史と文化を最大限に理解し、過去の人々の歴史と心も守って見せる、という心意気が込められていたとのことです。
(「創る・護る・救う」田中康夫 横浜市長選挙特設サイト https://yokohama2021.me )

文化的な理解度、素養の高さでは、各候補の中で群を抜いている田中氏は、此処6年ほどFM横浜で音楽番組「たまらなく、AOR」のパーソナリティを務めています。ホテルニューグランドでの記者会見の一部始終をYouTubeで見た横浜市民から申し出があり、横浜スタジアム向かい側の昨年休業したホテル横浜ガーデンの建物を選挙事務所を構える。市民から早くも共感によるレスポンスが出てきているということでしょう。事務所開きは、8月2日が予定されています。 

次に長野県政の成果として、乳幼児や高齢者、障碍者の福祉が向上した事についてコメントを求めると、仕事は項目をこなす事とは思わず、現場の「あり方」と「人が人のお世話をして初めて成り立つ福祉・医療・教育・観光・環境こそ21世紀型の労働集約的産業」という考え方を肝に据えたとの答えでした。「財源は生み出すもので借りるものでもないよ」とも話し、長野県で利権ありきのダム建設にストップを掛け、ダムによらない治水計画を国土交通省に認めさせた実績を匂わせました。

長野では、県庁の1階にガラス張りの知事室を作り、誰もが会見に参加可能な脱記者クラブを実施し、商店街や集落の空き屋を改修してデイサービスと乳幼児保育を一つ屋根のもとで行う世代分断型でない「宅幼老所」を350箇所も設置するなど住民に根ざした執政を実現しており、政党の利権や政党の党議拘束による同調圧力から自由な、知性ある姿勢が期待できそうに思います。

また、地方新聞やインディペンデントな報道にもよく目を通しており、様々な立場の人々の価値観を知り、小さくても良い仕事をしている企業を見逃さないと言った、情報収集力には頭が下がります。また、その知ろうとする経緯こそが人間性であり、彼の地方政治に於けるきめ細かな視点や人となりであります。

今回の選挙について田中氏は

「争点は、既に市民の7割が反対するIR誘致の是非を千日手の住民投票で問うことでも、日本全体、世界全体で取り組むコロナ対応問題でもない。全国20の政令指定都市の中で横浜だけが公立中学校に給食がない。待機児童16人と豪語しながら、施設に入れず育児休暇を延長している母親の子ども2842人を「保留児童」とご飯論法しているコロナ対策だって、アクリル板の間仕切りを徹底した飲食店には夜間の営業を認めてカップルや残業者も食事を味わえる「孤独のグルメ方式」を導入すべき。コロナを理由に営業制限、あんなのただのイジメだよ!」

「横浜には光と影がある。文化的に華やかなイメージの街だが、政令市最大378万人の人口なのに保健所は1箇所。65歳以上の高齢者97万人のうち51万人が一人暮らし。土砂災害警戒区域に指定されている市街化区域に7万3479戸もの家屋が建っている。東京ドーム51個分の広さの内陸部の在日米軍上瀬谷通信施設跡地の北半分に、消防・救急・医療・福祉を統合した危機管理のレスキュー拠点を設ける」

「人間はパブリックな勤務時間に保身という最もプライベートな思考をし勝ち。でも、同じ人物が家庭や地域に戻ったプライベートな時間に、今年の夏祭りはどうするか、中学校に完全給食を導入しなくちゃ、と最もパブリックな動きをする。その人々と一緒に歩む」

「僕は旧来型とは異なる地上戦と空中戦を統合した選挙戦を長野県知事時代から行ってきた。他陣営と違って政党や組合の支援とは無縁だし、家内制手工業みたいな陣容だから結果として、電話作戦も公選ハガキも行わない。その手間暇をSNSの空中戦と候補者自らマイクを握って18区をくまなく回る地上戦のハイブリッド選挙だ」

と会見後のFrance10のLINE電話取材も含めて語りました。また、筆者が終盤に

「必ずや、外圧に負けずに、IR誘致をはねのけることができるのか?」

と質問すると、田中康夫氏は、こう答えました。

「コンプライアンスとは、実質、手続きのこと。ガバナンスというのは、実際にリーダーが責任を取ること。IR=カジノの政府への申請手続きは市長選後の9月以降と推進派の現職市長が自ら公言してきた。「的確な認識・迅速な決断と行動・明確な責任」の新たなリーダーが誕生すれば「脱カジノ」だ」

これまでの人間味溢れた教育や福祉の執政ぶりと、他方で長野オリンピック招致委員会の帳簿焼却事件の闇を暴いた彼への地元メディアからのネガティブ・キャンペーンの苦労(痛み=マスコミによる印象操作)などを知る事ができ、政治家の紆余曲折、しかしそこで養われた経験値と力量は大変貴重に感じました。

理解や危機管理策、そして対策は実体験・実経験を伴わないと他人任せにせざるを得ないこともあります。いざという時に謀略に邪魔されて、叶わないこともあります。ディティールを描写する長い答弁、その過程で私達は、彼が多岐にわたる価値観や末端の、或いは普通の人々の社会問題を理解している事を見せつけられたのでした。筆者が横浜市の皆さんにお伝えしたいのはこの部分です。

国会議員を選ぶ際には調査権を駆使して粘り強く正当性を主張できる議論の強い人を選ぶといいでしょう。地方自治体の首長は、あらゆることを提案できる立場にあります。一点張りの候補よりも、細やかに生活への配慮が行き届いた人を選ぶと良いのではないでしょうか?

地元の商工会の期待を背負う現職林文子市長(IR推進)、立憲民主党が推薦、日本共産党が支援を表明する統計学の専門家の山中竹春氏(IR反対)、築地市場の仇を取らなくては死ぬに死ねないという魚河岸の坪倉良和氏(IR反対)、本来立憲民主党の考え方に近いと思われる郷原信郎弁護士(IR反対)、IRを推進する日本維新の会の恩恵を受ける元神奈川県知事の松沢成文氏、現職市議の太田正孝氏、ワクチン接種に反対する藤村晃子氏、という沢山の候補がいます。

その中でも一際目を引くのが、現内閣の国家公安委員長という閣僚の座を捨てて、6月22日に出馬を表明した小此木八郎氏と、作家で元長野県都知事、衆参議員と「新党日本」党首の経験を持つ田中康夫氏です。

小此木氏は、カジノ誘致を除いて自由民主党の政策と一致しており、改憲、自衛権に関する考え、他、国家与党と捩れはありません。緊張する方面としては、長く国家公安委員長であった為、デジタル・スマートシティ、監視都市への布石となりそうです。これは、田中氏が話す「冷温停止の職員のマインドを情熱の伝播で掘り起こしたい」と話している内容の対極方面となります。

共に横浜の山下埠頭へのカジノ誘致反対の立場を取っての出馬となりますが、田中康夫氏は国政に於いても極力妥協をせず、組織人というよりはアイデアと模索力に優れ、なんとかして独自路線を貫く政治家でありましたので、選挙期間中、長く話を聞く価値は十二分にあると思われました。市議会議員の立案にて、予算を配分するというマニフェストや、空き家の利用の具体策、高齢化で独居の老人を気遣い、救命救急のセンター構想などをお持ちです。

市区町村において首長権限は大変に大きいので、個人の力量や決意の強さを思うとIRに異議を唱える候補としては、この二人のどちらを信用できるか、他の政策はどうか?と言ったところに注目が集まりそうです。


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