3年半シリアで拘束された戦場ジャーナリスト・安田純平さんが日本外国特派員協会で11月9日で、質疑応答に応じた。
海外特派員からは「安田純平さんは謝罪すべきでない。むしろ、欧米ならば歓迎される」とか「自己責任論は民主主義を知らない無知の意見だ」という声が相次いであがった。
安田さんのあいさつ
安田:本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございます。今回、私の解放に向けてご尽力いただいた日本、トルコ、カタールをはじめとする多くの皆さま方、ご心配いただいた皆さまにおわびしますとともに、深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
そして、今も行方不明になっている多くのジャーナリストたちの1日も早い無事の解放を祈っています。今回、私自身の行動によって日本政府を当事者にしてしまったという点について、大変申し訳ないと思っています。今回、何があったか可能な限り説明することが私の責任であると思っています。よろしくお願いします。
司会:(英語)
本当に謝罪の必要があると考えているのか
Shingetsu News:Shingetsu Newsの【ペン 00:18:05】と申します。おわび、謝罪についての質問を申し上げたいと思うんですけれども、ご存じかどうか分からないんですけれども、先日、国境なき騎士団が、安田さんの。
男性:記者団ですね。
通訳:記者団ですね、すみません。
Shingetsu News:が、先日ステートメントを発表されてるんですけれども、その声明の中身というものは、謝罪をすべきではない、謝罪をする必要がないという内容のものになっております。謝罪をするのではなくて、むしろ歓迎をされるべき、評価をすべきだというような内容の声明になっているんですけれども、やはりその声明の内容、そして日本社会、日本の市民が期待していること、日本の社会の状況というのは、ある意味で異なった常識があるというふうに感じるということがあります。記者としての、ジャーナリストとしての仕事というのは、やはり危険なところに行ってそこの現場で起きていることを取材する、そしてそれを伝えるということが記者の仕事であります。政府や【マ**キ 00:19:05】のグループなどに管理される、コントロールされる内容ではなくて、現場での情報を伝えるということがジャーナリストの本来での仕事になります。
ですので、これからが質問のほうなんですけれども、やはり世界で活躍するジャーナリストとしては、本当に謝罪をする必要があるというふうに考えられているでしょうか。日本は民主国家ではありますので、民主国家に、そして民主主義な社会においてはやはりコントロールされる情報ではなくて、現場の直の情報を伝えるということがジャーナリストの仕事だと思います。もちろん日本政府はいろいろと解放に向けて働いていたということ、働きをしていたということはあったと思うんですけれども、それについて謝罪をするのではなくて、やはり帰国したことで歓迎をされるべきでしょうか。それについてのコメントをお願いいたします。
安田:この報道の仕事、ジャーナリストの仕事が政府であったり権力にコントロールされるものではないということについて、全面的に賛成いたします。今回、謝罪といいますか、私自身の行動に幾つかのミスがあったということは間違いないので、この点について皆さまのご批判をいただいて、今後に生かしていくために、まずごあいさつといいますか、ご批判をいただくに当たっておわび申し上げますということを申し上げています。
Sky Italia:イタリア、Skyテレビの【ピオ 00:23:05】と申します、まずお帰りなさいませ。イタリアと日本は、両国が公式ではないんですけれども、身代金の支払いをするということがあるというふうに報道をされています。それについてもちろんはっきりとしたイエスという言葉は期待していないんですけれども、少し間接的な質問をしたいと思います。
もし日本政府がそういったお金を支払ったのであれば、それは正しいやり方というふうに思いますでしょうか。それは正当なやり方なのか。もしくは自分の責任ではあるので、そういったことは日本政府から支払いをされることを期待しない、求めないということになるでしょうか。それについてのご意見をまずお伺いしたいと思います。
そして2つ目の質問のほうなんですけれども、イタリア人もシリアで拘束されているということも確認されています。ビデオの中でも彼の様子が報道されているんですけれども、アレッサンドロという名前の方です。もし彼についての情報などがもし何かありましたら、最後にいつ見掛けたのか、もしくは彼について何か最新の情報などがありましたら、イタリアの政府とイタリアの国民などのためになるような情報があれば、ぜひお伺いしたいと思います。
安田:自分自身のケースとほかの人のケースでなかなか同じように考えるのは難しいんですけれども、例えばほかの記者が人質になっているときに身代金を払うことによって解放されるのであれば、そういう方法もやむを得ないのではないかと思う一方で、では自分がそういった状況になったときにどうかというと、やはり自分がそれにふさわしいんだろうかとかいうことをおそらく考えるのではないかと思います。
もしも日本が身代金を払う国であるということが確証の高い事実としてある場合、私に限らず現場に行くことをかなり慎重に考えるようになるのではないかという気がします。日本政府が身代金を払うということはまずないということがあって、だからこそ現場には自分の責任判断で、だからこそ入るという人は多いのではないかと。
それからアレッサンドロさんの話なんですが、今日の資料にもあるんですけれども、2018年の7月5日、私のいた施設に彼が運ばれてきまして、私がこの施設を出る9月29日まで一緒にいました。彼は非常に元気な様子で、イスラム教徒に改宗したようでサイードと呼ばれていました。彼らと一緒に礼拝を初めはしていたんですけども、途中から彼の部屋で1人でやるようにと言われてやっていました。
時々、彼は泣いていることもあって、2年間拘束されているということで、時々、精神的につらいときがあるのかなと思うんですけども、彼に対する扱いというのは、例えば暴力であるとか、虐待のような状況というのはなかったように思います。それから彼自身が拘束者の側の人間になっているとか、そういうことも私が見る限りはないかなと思います。
直接、話をする機会はなかったんですけども、お互いに長い期間拘束されてるということはなんとなく分かりましたので、目線でなんとなくコミュニケーションを取るとかいうことはやっていました。
私の家族も長い間、非常に心配をしていましたので、当然、彼のご家族が非常に心配されているでしょうから、帰国してしばらくしてイタリア大使館にはこちらから連絡をしまして、私の知ってる限りの話はさせていただきました。
記者1:最後に会ったのは。
安田:最後に会ったのが、今年の9月29日、私がほかの場所に移されるときに見たのが最後です。
記者2:身代金についてのお話があったので、1つそれについて質問したいと思います。報道されたことの中で安田さんが奥さまに秘密のメッセージ、コードの入ったメモのようなメッセージをお送りしたということが報道されていました。そのメモの内容というのは、払わないでください、無事に帰国するので、ということだったんですけれども、そういったようなものをお送りしたかどうかということを、まず確認させていただきたいと思います。もしお送りしたのであれば、それはどういった方法で送ったのか。またはそのメッセージの内容ということはどういうような意味があったのかについて教えてください。
安田:まず、拘束者の側から個人情報を書けと言われて、個人情報を書いたのが2015年の12月7日です。このときに私は妻に対するニックネームに1文字付け足して、私は妻のことをオクと呼んでいるんですけど、そこに放置という言葉を付けて、オク放置という書き方をして、日本にいる間、常々、自分に何かあったときには放置するようにと、騒ぎにならないようにしてほしいということを言っていたので、この表現で妻に伝わるだろうと。この、オク放置という言葉だけではインターネットで検索してもおそらく分からないだろうということで、そこに書き込んでます。
それから彼らの側から、日本側から反応がないと言って、家族に圧力を掛けさせると言われて、妻の連絡先を教えたんですけども、メールアドレスと電話番号ですね。そのあと2016年1月6日に彼らが、日本から送られてきた質問に答えろということで書かされました。これは、私の妻が日本語で書いてきた7つの質問ですね。私でしか答えられないような、例えば先ほどの妻の呼び名であったり、私が使っている仕事用の椅子をどこで買ったのかとか、日頃買っている焼酎の銘柄を書けと言われて。彼らはイスラム教徒なので、これはなんの質問かと聞かれて非常に困ったんですけど、そういった質問が7つありました。それに対して同じように、払わないように。
この質問2回来たんですけども、1回目は前回と同じように、オク放置というのだけを入れたんですけども、このあともう1回、1月19日に同じ質問に答えろということでもう一度書かされました。おそらく送ったけれども反応がないということで、手違いがあって届いていないと思ったのではないかと思うんですが、もう一度書かされまして、このときに付け足してメッセージを入れてます。焼酎の名前というところに、つまり固有名詞なので何を書いても書きやすい場所ですよね。そこに払っちゃいかんという趣旨のことと、断固無視しろという言葉と、無事に帰るという3つのメッセージを入れました。
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