秘密法反対し逮捕された「無職」の男性 自身を報道するニュースの音をサンプリングし作曲

「海外だとミュージシャンやアーティストが作品に政治的な内容をこめるのはごくごく普通ですけど、日本で音楽をやってるとその辺は大分違うんですか?」

「それは俺が聞きたい」米川雄二郎さん(28)は言った。

秘密法・反対アクションで逮捕

米川さんは、去年12月6日、特定秘密保護法案が強行採決された夜に国会周辺で行われた同法案の強行採決に対する約2万人が参加した抗議行動に参加した際に逮捕され、麹町署に連行された。

「公務執行妨害」で逮捕された米川さんは、出所した後、自分が逮捕された件がマスコミに報道されているのを見た。正社員ではないが週四日〜六日働いている米原さんは、ニュースによると「無職」と表現されていた。「無職はねぇだろ」米川さんは思った。そして彼は報道の音源を拾い、サンプラーを使って、その夜についての曲をつくった。曲名は”Friday Night (Demo)”

週6日間労働なのに「無職」と報道

グルービーなエレクトロニックミュージックの上に米川さんの逮捕のニュースを坦々と告げる女性アナウンサーの機械的な声が流れる。「特定秘密保護法を巡り、抗議活動の際に機動隊員に唾を吐きかけたとして無職の米川雄二郎容疑者が公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕されました」

「自分のことが報道されたじゃないですか。むかつきましたよあの報道は。『無職』だとか言うし。逆に考えればこれ良い素材じゃないか。もうこれ使えって言ってるようなもんじゃない 。(自分のことが報道されるなんて)ないじゃないですかそんな。いや、別に自慢できることでもないですけど。普通は隠したいことなんだろうけど、逆転の発想ですよねそこは。これ使ってやろうじゃんって話ですよ。やられたんだから。(音楽に)使えるものはなんでも使いますよ」と米川さんは言った。

唾を吐いて逮捕 機動隊により

全身アザだらけに 耳からは出血

騒動の後、職場の仲間は「唾吐いただけでマスコミってあんなに報道するんだね」と言い、大家さんは「ああいうところには行っちゃ駄目だよ」と米川さんに警告した。

彼は12月5日は友人と、6日は1人で日本酒の一升瓶とデジタルカメラを持って国会前の抗議行動に出かけた。彼が逮捕された国会前の横断歩道付近では、フェンスで道を塞いで合法の抗議行動を妨害しようとする機動隊と抗議参加者達が揉めている現場だった。機動隊による妨害を阻止しようと抗議者達がフェンスを押していた。米川さんはいがみ合いの最前列に行き、若い警察官から挑発を受け、彼は警察官に向かって唾を吐いた。機動隊員達は米川さんを連行しようと彼を引っぱり始め、抗議参加者達は米川さんを連行させまいとし、米川さんの引っ張り合うという事態になった。米川さんが着ていた服は、Tシャツ、トレーナー、パーカー3枚とも派手に破れ、体にはアザができ、耳からは出血があった。

長時間、同じ質問の繰り返しが堪えた

米川さんは午後9時過ぎ頃に麹町署に連行された。夜中の12時頃に、特定秘密保護法案を問題視し活動している弁護士達が米川さんに面会しに麹町署を訪れ、これは社会的な問題なので、これから何かあったら連絡してほしいと彼に告げた。留置所の警官は「ああいう弁護士は商売でやってるから金がかかる」と米原さんに何度も言ったが、弁護士に聞くと、費用はかかっても1万円か2万円程度だと言った。

米川さんは、留置所自体の居心地というのはそんなに悪いものではないが、取り調べで何度も同じことを繰り返し長時間聞かれたりするのが堪えると言う。取り調べでは、どこかの組織や団体に属しているのかどうかということを最も重点的に聞かれたが、騒ぎたいからああいう場にいたのだろう、という目で見られていたように思うと米川さんは言う。

6日に留置所に行ったあと、翌日まで取り調べがあり、それから別の留置所に移り一泊。8日に東京地検に行って検事と話をし、 午後3時頃に家族が立ち会えなかった為、弁護士の立ち会いのもと出所。約一週間後に不起訴となったことがわかった。

ロックスターの三宅洋平さんに触発

同日6日の抗議行動で靴を投げて逮捕された「靴無げAさん」と呼ばれる抗議者は、「威力業務妨害罪」で起訴された。Aさんの投げた靴が「威力」となり参議院の「業務」を「妨害」したかどうかが審理の争点となっている。

米川さんは、17歳の頃にAKAI MPC1000という当時わりと最新だったサンプラーを買った。メルツバーグ、ハイノケンジ、DELI、NIPPS、MELT-BANANAやDJ Krushなど、ラップ、ヒップホップ、ノイズなどを中心に聴いていた。AKAI MPC1000は調子が悪くなったため、今はMPC2000XLという少し古い型のサンプラーを使っている。

米川さんがデモなどの形で政治参加しようと思った直接のきっかけとなったのは、2013年夏の参議院選挙に立候補した三宅洋平さんが、政治に音楽やアーティストの感性を混ぜることに挑戦した「選挙フェス」からだと米川さんは言う。

政治性の高い音楽をやろうと思っているわけではないけれど、自分に関わっていることでもあるし、政治に対して思うところも多いので、政治的な素材も入れるときは入れるし、言うときは言おうと思っていると米川さんは言った。

Reported by 蜂谷翔子・記者

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