「パレスチナ民衆はハマスの武装闘争を支持しているわけではない」-『欧州緑の党』代表が指摘 

2006年1月にパレスチナ自治政府の評議会選挙でハマスが圧勝したが為に、欧州在住のユダヤ人の間でも、パレスチナ人に対する疑心暗鬼が拡がっていた。彼らはハマスによる武装闘争を支持たのか、と。

評議会選挙から間もない時期に、パリ在住のユダヤ人サークルが主催して、「赤毛のダニー」ことダニエル=コーン=ベンディット欧州議会議員(『欧州緑の党』代表)の講演会が行われた。フランスの全共闘「68年5月革命」の英雄にして、フランス生まれのユダヤ系ドイツ人だ。気さくなキャラクターとその熱情的な演説は今もフランス人を魅了してやまない。

パレスチナ民衆はハマスの武装
闘争を支持したのでない

ダニーの講演後の質疑応答では参加者から、ハマスを勝利に導いたパレスチナを非難する声が相次ぎ、会場は熱気を帯びた。そのときのダニーの返答が未だに忘れられない。彼は次のように言った。

「私はユダヤ人だが、シオニストではない。むしろ、シオニズムには批判的だ。ハマスが勝利したのは、彼らの武装闘争が支持されたからではない。ハマスの勝利はファタハの腐敗に対する『Non』だ」

たしかに、アラファト夫人の散財をあげるまでもなく、ファタハの腐敗・汚職は目に余るものがあった。一方、ハマスは貧困層に食料や教科書を届けるなど、貧困対策に余念がなく、ひろくあつい支持を得ていた。

欧州ではユダヤ人=シオニストではない

日本では、ユダヤ人について誤解がある。

ユダヤ人=シオニスト……という誤解だ。なるほど、2000年大統領選で副大統領になった民主党の重鎮・ジョセフ=リーバーマン上院議員のように、敬虔なユダヤ教徒がシオニストというケースが米国では多くある。そういった人たちが「シオニスト=ロビー」として徒党を組んで、アメリカ政治に多大な影響を与えている。米国が親イスラエルになる所以だ。ただ、欧州の場合は様相を呈する。ユダヤ人でありながらシオニズムに批判的なダニーのようなケースもある。米国ほどまでシオニスト=ロビーは強力でない。

日本では、パレスチナについても誤解がある。

それはハマス=テロリスト……という誤解だ。たしかに、ハマスには軍事部門があるが、貧困層を支援・救済する政治部が健全と存在する。イスラエルのネタニヤフ首相のようにハマスとアルカイダを同一視することは、ハマスの政治部門を弱体化させ、軍事部門をむしろ増長させることに他ならない。

今夏で欧州議会議員を退任した「赤毛のダニー」はパレスチナ国家の樹立と「二国家」の平和的共存を長きにわたって欧州議会で説いてきた(映像はその一部である)。

ハマスを交渉相手として認め、交渉のテーブルを設け、「自己抑制と理性に裏打ちされた対話」を続けることこそが、ハマスに武装闘争を放棄させ、イスラエル・パレスチナの共生につながる。ダニーの主張でもある。
Cohn_Bendit_at_Paris_2006

Parisユダヤサークルの集会で講演するダニー (写真撮影:及川健二)

 

取材こぼれ話

この記事に掲げたモノクロの写真は2005年5月にParis郊外Vincennesの政治集会で私がダニエル=コーン=ベンディット氏を撮ったものだ。ダニーはこの写真をたいへん気に入ってくれて、公式ホームページの「contact」(問い合わせ)欄にはこの写真が掲げられた。

Article et photo par OÏKAWA Henri-Kénji

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