【アメリカ発】今、Covidデータをどう考えるか

2022年1月9日 Henri Kenji OIKAWA 0

https://www.nytimes.com/interactive/2022/01/07/us/covid-data-explained.html アメリカ 新規感染者:61万1389人 入院者数:11万6029人 死者:1405人   コロナウイルスの感染者数は米国内で過去最高を記録し、現在も増加し続けています。入院患者数は、デルタ波の最盛期を超えています。死亡者数は増加に転じています。 全体的なパターンはよく知られていますが、スピードは速いが深刻度は低い亜種が米国を襲っているため、これらの指標をどのように解釈するか、新たな視点が必要です。ここでは、今後数日から数週間の間にデータをどのように考えるべきかを説明します。 オミクロンにはまだ成長の余地があることを示す事例の急増 米国では、わずか数日の間に、コロナウイルスの感染者数がこれまでの記録を更新しました。これは、オミクロンというウイルスが、ワクチン接種率の高い地域を含め、あらゆる場所で急速に広がっているためです。13州を除くすべての州で、この1週間に記録的な患者数が発生しています。 これらの症例数は驚異的なものですが、専門家によれば、数ヶ月前や1年前に比べれば、それほど心配する必要はないとのことです。むしろ、国への警告として、感染を減らし、最も弱い立場にある人々を守るために、行動や政策を調整すべきだと考えています。 世界的な保健機関であるResolve to Save Livesの上級技術顧問であるShama Cash-Goldwasser博士は、「状況は変化しており、私たちは適応しなければなりません」と語ります。重症度の低いタイプがあり、多くの人がワクチンを接種していますが、オミクロンへの感染を防ぐには、デルタへの感染を防ぐほどの効果はないという証拠があります。 多くの地域で感染者数が増加していますが、Omicronの感染者の多くは無症状または軽度であり、人々は検査を知らない可能性があるため、現在は確実に数が不足しています。また、検査機器が不足しているため、検査を受ける機会が限られています。専門家によると、一般的に普及している家庭用検査機器の結果の大部分が公衆衛生局に報告されていないとのことです。 多くの州で患者数が急増した後、南アフリカで見られたように、患者数が急激に減少する可能性がありますが、専門家は、全体的に重症度が低い変異型であっても、患者数の多さから、非常に多くの重症患者が発生する可能性があると警告しています。 州・準州疫学者協議会(Council of State and Territorial Epidemiologists)の事務局長であるジャネット・ハミルトン氏は、「多くの人が病気になり、その中で本当にひどい病気や有害な結果になる人の割合が少ないとしても、多くの人が病気になることに変わりはありません」と述べています。 このように感染の危険性が高い状況下で、公衆衛生の専門家は、感染者数や動向に注意を払うことで、予防接種を受けたり、室内でマスクを着用したりするなど、感染から自分自身を守り、周囲の人を感染させないようにするための決断を促すことができると述べています。 […]

ドミニク・ドヴィルパン元首相がカブールでのアメリカの準備不足を非難

2021年10月7日 Henri Kenji OIKAWA 0

2003年のイラク戦争への「ノー」という演説が記憶に新しい、元首相で元オルセー府(外務省)の大臣だったドミニク=ドヴィルパン氏が、アフガンの状況管理に厳しい目を向けている。2021年9月6日朝のフランス・インターのインタビューで、ドミニク・ドヴィルパン元首相は、アメリカのカブールからの撤退を厳しく批判した。 「アメリカ人がドーハでタリバンと協定を結んだ途端、出発の合図が出された(…)。”侵略者 “の出発は、いつも慌ててカードの家のように行われる。」 彼にとって、元主人(※タリバン)による電光石火の奪還は、今回の撤退における米国の準備不足を物語っている。 「私は、なぜアメリカ人自身がこの現実を発見する準備ができていなかったのか、よく理解できない」と元外務大臣は考えている。 アメリカ大統領のジョー・バイデン氏も、これらの避難活動はアメリカ軍の中でも「最も困難なもの」であると認識していました。 見直されるフランス外交 さらに言えば、マティニョン(首相府)に入居していた彼は、「失敗の教訓が生かされていない」ことを残念に思っている。 「民主主義国家は、自分の過ちを公に認めることができません。ジョージ・ブッシュやトニー・ブレアは、自分たちの政策の悪行を説明する必要がなかった」 と述べている。 オルセー(外務省)の元主人は、フランスの防衛政策にも批判的だ。 「軍隊はテロリストの問題を解決するどころか、事態を悪化させています。介入することで自国を守っているつもりになっているが、実際には現地に行くことで、より多くのことをさらけ出している。」 これらの「誤り」は、フランスの統治様式に直結していると彼は考えている。「外交政策はすべてエリゼ宮(大統領府)で行われている。でも、そのためのものではありません。5、6人のアドバイザーでは外交政策は作れない」とドヴィルパン氏は言う。

ビル=クリントン元大統領がオバマ政権の経済政策の正当化を首相!民主党党大会2012で

2021年9月28日 Henri Kenji OIKAWA 0

2012年9月5日水曜日に行われた民主党全国大会でのビル・クリントン元大統領のスピーチの全文です。 PRESIDENT BILL CLINTON: ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございました。(ありがとうございました。ありがとうございました。ありがとうございます ありがとうございました さて、市長さん、民主党の皆さん、私たちは大統領を指名するためにここにいます。(私にも考えがあります (歓声、拍手喝采) 私が指名したいのは、彼自身の人生が逆境と不確実性に満ちたものであるということです。私が推薦したいのは、すでに弱体化していた経済の流れを変えるために大統領選に立候補し、選挙のわずか6週間前に大恐慌以来の大崩壊を経験した人物です。恐慌への転落を食い止め、回復への長い道のりを歩んだ人物ですが、その間、彼がどれだけ多くの雇用を救い、創出したとしても、自分の子供を養うことを心配し、希望を持ち続けようとする何百万人もの人々が待っていることを知っていました。 私は、外見はクールだが(歓声、拍手)、内面ではアメリカのために燃える男を推薦したいと思います。(歓声、拍手) 私が推薦したいのは、イノベーションと創造性、そして教育と、そう、協力によって、新しいアメリカン・ドリーム経済を構築できると、疑いもなく信じている男性です。(乾杯) そしてところで、昨夜の後、私はミシェル・オバマと結婚する良識のある男性が欲しいです。(乾杯、拍手) あのね-(歓声、拍手)。私は…(歓声、拍手)。 私は…バラク・オバマ氏に次のアメリカ大統領になってもらいたいのです。(そして、彼を民主党の旗手として誇りを持って推薦します。 さて、皆さん、数日前のタンパでは、大統領と民主党は自由な企業活動や個人の自発性を信じていないとか、誰もが政府に依存することを望んでいるとか、経済に悪影響を及ぼすとか、いろいろな話を聞きました(笑)。 この共和党の物語、オルタナティブ・ユニバース(笑、拍手)では、この部屋にいる私たちの誰もが、何かに貢献していて、皆、完全に自力で成功しているとしています。民主党の偉大な議長の一人であるボブ・ストラウスは(歓声と拍手)、政治家は誰もが有権者に自分が建てた丸太小屋で生まれたと思わせたいとよく言っていました。(笑、拍手) しかし、ストラウスが認めたように、そうではありません。(笑)。) 私たち民主党は、強力な中産階級があって、貧しい人々にもその中に入るための真の機会があり、(歓声、拍手)、未来に絶え間なく目を向け、企業と政府が実際に協力して成長を促進し、繁栄を広く共有することで、国はよりよく機能すると考えています。私たちは、「自分のことは自分で」よりも「みんなで一緒に」のほうが、はるかに優れた哲学だと信じています。(拍手) そうです。 では、誰が正しいのでしょうか?(1961年以来、52年間、ホワイトハウスは共和党が28年、民主党が24年握っていました。この52年間で、私たちの民間経済は6,600万の民間部門の雇用を生み出しました。 では、雇用のスコアはどうでしょうか?共和党は2,400万人、民主党は4,200万人です。(乾杯、拍手) さて、(歓声、拍手)これには理由があります。機会均等と経済的エンパワーメントを推進することは、道徳的にも経済的にも正しいということがわかりました。(なぜか?なぜなら、貧困や差別、無知は成長を妨げるからです。(人間の可能性を奪い、新しいアイデアに投資しないことは、影響を受ける人々を切り捨てるだけでなく、私たち全員を苦しめることになるのです。(私たちは、教育やインフラ、科学技術研究への投資が成長を促すことを知っています。教育やインフラ、科学技術研究への投資は成長を促し、良い仕事を増やし、私たちのために新たな富を生み出すのです。(乾杯、拍手) さて、最近私が気づいたことがあります。皆さんもそうでしょう。それは次のようなことです。私が育った時代が違うからかもしれませんが、共和党員と意見が合わないことはよくありますが、現在、共和党を支配している極右派が大統領や他の多くの民主党員を憎んでいるように、実は彼らを憎むことはありませんでした。なぜなら、アイゼンハワー大統領はリトルロック・セントラル高校を統合するために、私の故郷の州に連邦軍を派遣したからです。(アイゼンハワー大統領は、州間高速道路システムを構築しました。 知事時代には、レーガン大統領とホワイトハウスと協力して福祉改革の第一弾を実施し、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領と協力して国家教育目標を策定しました。 (歓声、拍手) […]

ロン・レーガンが民主党全国大会2004のスピーチ アルツハイマー病の研究を

2021年9月28日 Henri Kenji OIKAWA 0

2004年7月27日(火)にマサチューセッツ州ボストンで開催された2004年民主党全国大会で、父ロナルド・レーガンとは別人のロン・レーガンがこのスピーチを行いました。ロンは父よりもずっとリベラルな人物として知られており、数年前に父がアルツハイマー病と診断されて以来、幹細胞研究を積極的に支援してきました。このスピーチは、ゼル・ミラーの共和党全国大会でのスピーチと比較されていますが、それはゼル・ミラーが共和党と似たような関係にあるからです。 以下は、ロン・レーガンの民主党全国大会での演説のテキストです。翻訳は日仏共同テレビ局France10支局長の及川健二が手がけた。 アルツハイマーの研究を RON REAGAN どうもありがとうございました。とても親切ですね。皆さん、こんばんは。 皆さんの中には、私のような名前の人間が民主党大会でスピーチをすることに驚いた方もいるかもしれません。そうでない方もいらっしゃるようですね。私は政治的なスピーチをするために来たのではありませんし、話題も党派性とは関係ありません。 つまり、胚性幹細胞、つまり私たち自身の体の材料を使って作られた細胞を使って、さまざまな致命的で衰弱した病気を治療するという、私たちの、あるいはどのような人生においても最大の医学的躍進となるかもしれない研究の問題について、今夜ここでお話したいと思います。パーキンソン病、多発性硬化症、糖尿病、リンパ腫、脊髄損傷などなど。 何百万人もの人々が苦しんでいます。そして、毎年、毎日、国中、世界中の家族に悲劇が訪れています。しかし、私たちの力でこの苦しみを終わらせることができるかもしれません。私たちは、ただ挑戦するだけでいいのです。 皆さんの中には、私が「胚性幹細胞研究」と言ったときに、何のことを言っているのか、すでにご存知の方もいらっしゃるでしょう。それ以外の人は、「それはかなりの口語表現だ」と思っていることでしょう。と思っている人もいるでしょう。ちょっと待って、ちょっと待って。 できるだけ簡単な絵を描いてみたいと思いますが、それと同時に、科学、つまり信じられないような科学が関係しているのです。今から10数年後、あなたがパーキンソン病と診断されたとしましょう。現在、治療法はなく、副作用のある薬物療法では一時的に症状を和らげることしかできません。 このとき、医師は薬を処方する代わりに、あなたの腕からいくつかの皮膚細胞を採取したとします。自分の細胞の核を、核を取り除かれたドナーの卵子に入れます。化学的または電気的な刺激を与えると、細胞の核が分裂を始め、新しい細胞が作られ、それが組織培養にかけられます。この細胞は、あなたのDNAのみを含む胚性幹細胞を生成するため、組織拒絶反応のリスクがありません。これらの幹細胞は、パーキンソン病患者で欠陥がある神経細胞を作るように仕向けられます。そして最後に、あなたのDNAを含んだこれらの細胞は、あなたの脳に注入され、パーキンソン病の原因となったドーパミンを十分に生成できない欠陥細胞と入れ替わります。 つまり、病気が治るのです。 そしてもう一つ、この胚性幹細胞は無限に複製を続けることができ、理論的には体のほぼすべての組織を再現するように誘導することができるのです。 自分専用の生物学的修復キットが病院に待機しているというのはどうだろう?魔法のように聞こえますか?未来の医療の世界へようこそ。 ところで、このプロセスには胎児の組織は含まれていません。胎児が作られることも、破壊されることもありません。すべては実験室の中で細胞レベルで行われます。 さて、この素晴らしい未来を邪魔しようとする人たちがいます。基礎研究に不可欠な連邦政府の資金援助を拒否しようとする人たちです。彼らは、たとえ最も初期の段階の胚であっても、子宮に移植されることもなく、実際の胎児に成長することもない胚であっても、その成長を妨げることは殺人に等しいと主張する。 このような人々の中には、言うまでもなく、政治的な斧を振り回しているだけの人もおり、彼らは自分自身を恥じるべきです。しかし、多くの人々は、善意であり、真摯な人たちです。彼らの信念は、まさに信仰の対象であり、彼らにはその権利があります。しかし、少数の人の神学が、多くの人の健康と幸福を妨げることが許されるということにはなりません。 自分の命が危険にさらされている人たちを見捨てて、どうして命を肯定することができるでしょうか。人間の知性は、区別することができるという特徴を持っています。 確かに、これらの細胞は、理論的には、全く異なる状況下で、人間に成長する可能性を秘めている。しかし、これらの細胞はそれ自体では人間ではない。手足の指もなく、脳も脊髄もない。思考もなければ、恐怖もない。痛みも感じません。 組織培養で増殖している未分化な細胞と、親、配偶者、子供といった生きて呼吸している人間とを区別することはできるはずだ。 私はある子供を知っています。もう13歳になるはずですが、若い女性と言った方がいいかもしれません。彼女には手足の指があります。彼女には心がある。思い出もある。希望を持っています。彼女は若年性糖尿病を患っています。この病気を持つ多くの子供たちがそうであるように、彼女も驚くほどうまく適応しています。彼女が装着しているインスリンポンプは、ラインストーンで飾られています。カテーテルの針も自分で扱えるようになりました。早朝に行われる採血も、寝て済ませるようになりました。 と思っている人もいるでしょう。ちょっと待って、ちょっと待って。 できるだけ簡単な絵を描いてみたいと思いますが、それと同時に、科学、つまり信じられないような科学が関係しているのです。今から10数年後、あなたがパーキンソン病と診断されたとしましょう。現在、治療法はなく、副作用のある薬物療法では一時的に症状を和らげることしかできません。 このとき、医師は薬を処方する代わりに、あなたの腕からいくつかの皮膚細胞を採取したとします。自分の細胞の核を、核を取り除かれたドナーの卵子に入れます。化学的または電気的な刺激を与えると、細胞の核が分裂を始め、新しい細胞が作られ、それが組織培養にかけられます。この細胞は、あなたのDNAのみを含む胚性幹細胞を生成するため、組織拒絶反応のリスクがありません。これらの幹細胞は、パーキンソン病患者で欠陥がある神経細胞を作るように仕向けられます。そして最後に、あなたのDNAを含んだこれらの細胞は、あなたの脳に注入され、パーキンソン病の原因となったドーパミンを十分に生成できない欠陥細胞と入れ替わります。 […]

南アフリカ共和国元大統領ネルソン・マンデラ氏追悼式典におけるオバマ大統領の挨拶

2021年9月25日 Henri Kenji OIKAWA 0

2013年12月10日に行われたネルソン・マンデラ氏の追悼式で、バラク・オバマ大統領は、マンデラ氏の死は自分自身を振り返る時であると述べました。 「私たちの立場や状況にかかわらず、正直な気持ちで、彼の教えをどれだけ自分の人生に生かすことができたかを問わなければなりません」。オバマ大統領はこう語りました。「これは、一人の人間として、また一人の大統領として、私自身に問いかけていることです。南アフリカと同様に、米国も何世紀にもわたる人種的な抑圧を克服しなければならなかったことを私たちは知っています。この国でもそうでしたが、新しい日の夜明けを見るためには、知られている人も知られていない人も含めた無数の人々の犠牲が必要でした」と述べています。) 歴史的なマンデラ追悼スピーチ オバマ大統領:ありがとうございました。 (拍手)ありがとうございました。 ありがとうございました。 グラサ・マッシェル氏とマンデラ家の皆様、ズマ大統領と政府関係者の皆様、過去と現在の各国首脳の皆様、ご来賓の皆様、本日、皆様とご一緒できることを大変光栄に思っております。 南アフリカの人々、(拍手)、あらゆる人種、あらゆる生活様式の人々、ネルソン・マンデラ氏を私たちと共有してくださったことに世界が感謝しています。 彼の闘いはあなたの闘いであり、彼の勝利はあなたの勝利です。 彼の勝利はあなたの勝利でした。 あなたの尊厳と希望が彼の人生に表現されています。 そして、あなた方の自由と民主主義が彼の大切な遺産です。 人生を構成する事実や日付だけでなく、一人の人間の本質的な真実、つまりその人の私的な喜びや悲しみ、その人の魂を照らす静かな瞬間やユニークな資質を言葉で表現することは、どんな人間であれ、弔辞を述べることは難しい。 しかし、国家を正義に向かわせ、世界中の何十億人もの人々を感動させた歴史上の巨人をそうすることは、どれほど難しいことでしょうか。 第一次世界大戦中に生まれ、権力の中枢から遠く離れた場所で牛の群れを飼い、テンブ族の長老から手ほどきを受けて育った少年、マディバは、20世紀最後の偉大な解放者として登場します。 ガンジーのように、彼は抵抗運動を指導することになるが、その運動は当初は成功する見込みがほとんどなかった。 キング牧師のように、抑圧された人々の主張と人種的正義の道徳的必要性を力強く訴えた。 彼は、ケネディとフルシチョフの時代に始まった冷戦末期の残酷な投獄生活に耐えることになる。 牢獄から出てきた彼は、武器を持たずに、エイブラハム・リンカーンのように、国がバラバラになりそうなときに国をまとめることになる。 そして、アメリカの建国の父のように、将来の世代のために自由を守るための憲法秩序を構築する。民主主義と法の支配へのコミットメントは、選挙で選ばれただけでなく、たった1期で権力の座から退くことを望んだことでも立証されたのである。 ネルソン・マンデラ氏は、その人生、業績、そして当然のように得られた称賛を考えると、微笑みをたたえ、穏やかで、劣った人間の陰湿な問題から切り離されたアイコンとして記憶したくなると思います。 しかし、マディバ自身は、そのような生気のない肖像画に強く抵抗しました。 (拍手)代わりに、マディバは自分の疑問や恐れ、勝利と誤算を私たちと共有することを主張しました。 「私は聖人ではない」と彼は言った。「聖人とは、努力し続ける罪人のことだと思えば別だが」。 私たちが彼を愛したのは、彼が不完全さを認めることができたからであり、彼が重い重荷を背負っているにもかかわらず、ユーモアといたずら心にあふれていたからである。 […]

イラン情勢の緊迫化とG20でのトランプ「日米安保に不満」発言。「令和初の国賓」の「おもてなし」は一体なんだったのか?トランプにもイランにも北朝鮮にも中国にもバカにされっぱなし、安倍外交の赤っ恥 by 藤原敏史・監督

2019年7月10日 Henri Kenji OIKAWA 0

失態ばかり続いて来た安倍外交とはいえ、イラン訪問は想定外の、最大級の大失敗だった。日本のメディアは懸命に、この「仲介」は元から難しかったから仕方がない的な論調を取っているが、まずイランにはそもそもアメリカと戦う気もその国力もないわけで、トランプにも戦争する気がないのであれば、双方が安倍の訪問を和解か、少なくとも対話に舵を切るきっかけとすることは、暗黙の了解に等しかったはずだ。 つまりイランに行きさえすればほとんど自動的に成功するに等しく、ネックだったのは単に、それができる立場の人間が滅多にいなかったことだけだ。 その点で、世界中の誰よりも、考えられる限りの最適任な立場にいるのが、安倍晋三首相だった。 まさに「安倍首相にしかできない外交成果」が予想されたイラン訪問だが… 日本はイスラム革命後のイランと正式国交を保ち続けて来た、主要先進国の中で最大の友好国だ。しかも在テヘラン・アメリカ大使館包囲占拠事件を機にアメリカが断交した際にも、日本がレーガン政権に同調せず、イランとの友好関係を維持した独自外交の立役者だったのが、安倍晋三の父・安倍晋太郎・元外務大臣である。 つまり安倍晋三はイランの国家的恩人の息子であり、しかもその父が外務大臣だった頃にイランの大統領だったのが現大アヤトラ(最高国家指導者でイランのシーア派イスラム教最高位の聖職者)のハメネイ師、つまりイラン国家元首の亡き旧友の息子でもある。現代のイランはイスラム体制だが、だからと言って例えばイスラム国のような新興カルト的な過激派集団と同列に扱ってはならない。シーア派正統の系譜を自認する大アヤトラをトップに頂く政府はイラン国民にとっては時代錯誤な抑圧ではあっても、だからこそその振る舞いは伝統的かつ厳格に道徳的な「保守」そのもので、古風な価値観については極めて礼儀正しくなくてはならない。 安倍の父・晋太郎の尽力で、イランは日本への石油の輸出を続け、90年代には大勢のイラン人出稼ぎ労働者が日本に来ていたこともある。正式国交が続いたので日本のテレビ番組も輸入でき、NHKの連続テレビ小説『おしん』が世界的なヒットになったきっかけはイランでの大流行だったし、アニメ『一休さん』も今でも親しまれている。言い換えればイラン人は日本人について、おしんのように勤勉で芯が強く、一休さんのようにやさしく機転が効いて知的な民族なのだと思ってくれているし、それはイラン人、つまりペルシャ民族が重んじて来た価値観からして深く共感できるところでもある(勤勉で勉強好き、知性と教養を重んじる国民性がある)。 日本が広島・長崎の原爆被害に苦しんだ国であること、第二次大戦後は戦争放棄の憲法を持った平和国家であることは中近東でもよく知られているし、そこがまた日本への(欧米の他の先進国とは一線を画した)敬意と憧れに結びついている。なにしろイスラム革命後のイランとアメリカの対立とほぼ同時代に、日米間では貿易摩擦が激化していて、つまりイランから見れば横暴な軍事大国アメリカが日本の強力な経済力に負けていたのだ。戦争という非人道的な手段を放棄して、平和的な経済成長と技術力、つまり努力と知恵でアメリカにリベンジを果たしたわけで、イラン人には痛快に見えただろうし、「おしん」と「一休さん」の国にいかにもふさわしい、とも思えることでもあろう。 安倍首相やその支持層がこだわる「親日国」「反日国」分類で言えば、イランこそ世界最大の親日国なのだ。一方で古都イスファハンなどのイランの貴重な文化遺産は「シルクロード」や古代史への憧れが強い日本のテレビでもよく取り上げられ、多くの日本人観光客の憧れの的になり、90年代以降はイラン映画も日本の映画ファンにとって馴染み深い。 つまりこの仲介外交は他の誰にも出来ないが、日本の、それも安倍晋三首相であれば絶対に失敗しないはずのものだ。これまでの安倍外交がことごとく失敗し成果がなにもないことを容赦なく指摘して来た本サイトですら、筆者はこのアイディアには感心もしたし、安倍政権初の外交成果で中東の軍事衝突の危機が回避されることに、率直に期待もしていた。 ただし以上の想定はあくまで、そもそも「仲介」が必要とされていた(双方が本音では和解を望んでいた)、という前提に立った場合に限る。 イラン訪問は「余計なお世話」で頼まれもしない仲介を買って出ただけ? イランが緊迫した事態の終息を求めているのは当たり前だ。もともと核合意をアメリカが一方的に破棄したことで起こった緊張で、トランプの選挙目的ジェスチャーであればこそ、イランにとっては迷惑千万でしかなく、一刻も早く正常な状態に戻し、アフマディジェナド政権時代に続いた国際制裁で痛みきった経済を立て直し、国民生活を向上させたい。穏健派のハメネイに大統領が代わり、米オバマ政権の主導で核合意が成立してからも、制裁の解除と経済の回復は期待されたほどには進んでおらず、国民の不満は溜まっているのだ。戦争などやっている余裕はないし、いかに中東地域では随一の大国でも、およそアメリカにかなうような軍事力は持っていない。 一方の側のトランプも、今もイラク戦争のトラウマに苦しむ米国では、もし対イラン戦争でも始めたら次の大統領選では惨敗とも言われている。それにトランプ自身が和解を望んでいないのであれば、そもそも安倍が仲介を申し出ること自体がなかったはずが、現に国賓として来日した際にトランプは安倍の申し出を歓迎した、と少なくとも日本のメディアは報じていた。 だが現実の、意外な展開から見えて来た実態は、どうも違ったようだ。 結論から言えば、トランプは安倍の仲介などそもそも期待していなかった。だから安倍にイランが納得できる妥協案を託すこともなく、なのに安倍は「強いアメリカは正しいのだから従いましょう、トランプ様が話し合ってもいいと仰ってるのですからありがたく思いなさい」程度の、相手の名誉を傷つけて事態がより悪化して当然の「メッセージ」だけを持って、ノコノコとテヘランに出掛けたとしか思えない。 ロウハニ大統領との首脳会談が予定外に時間が伸び、共同会見が2時間ほど遅れた時には、こんな心配はまだまったくしていなかった。むしろアメリカ側が安倍に託した和解条件に曖昧さがあったりすれば、しっかり議論するため時間もかかるだろうし、内容が具体的であればあるほど、細部の詰めの確認作業も必要だ。イラン側に和解の意思が強いほど(イラン人、つまりペルシャ民族の国民性からしても)より慎重になり、時間もかかっておかしくないし、期待が持てる話であればあるほど、未熟な段階での公表の文言には細心の注意が必要なのも外交の常識だ。 だがやっと始まった共同会見は、予想も期待も完全に裏切るものだった。 ロウハニはイランが平和な発展だけを望んでいて核開発は民生用の原子力発電目的しかないこと(つまり、従来と何も変わらない、アメリカの保守強硬派以外では今や誰も疑っていないこと)を語った上で、「だが不当に侵略されるなら断固として戦い続ける」と、これまでと同じ、かつ独立国として当然の見解を毅然と繰り返したのである。 憲法9条と非核3原則をわざわざ絶賛したハメネイ師 これには正直、驚いた。安倍の「仲介」はむしろイラン側の、国家の名誉をかけた決然とした態度をより頑なにしただけだった。いや一体、安倍はなにをしにテヘランまで行ったのだろう? 本当に「アメリカは強い国だから従った方がいい」くらいのことしか言わなかったのだろうか? 翌日の、大アヤトラのハメネイ師との会談はさらに強烈だった。日本の外務省は師が核兵器開発の意図はないと明言したのを「成果」だと必死に喧伝しているが、元からイランが一貫して言い続けている公式の立場であり、しかも大アヤトラが単に国家元首であるだけでなくシーア派最高レベルの宗教指導者でもある以上、必ず言うべきだったことに過ぎない。 一方でトランプの「メッセージ」については、ハメネイ師は「信頼できないから聞いても意味がない」「アメリカが公正な交渉をやるとは思えない」とバッサリ切り捨てた。それでも安倍の顔は礼儀正しく立てて「あなたは信頼しているし、こうしてお話しするが、アメリカは信頼できないので会う気も話す気もありません」と明言する会談冒頭の発言が、即座に国営放送で大々的に放映されたことからも、イラン政府のメッセージは明らかだろう。 それでも日本にとっては成果だったのは、従来は核兵器を持つべきではないとする根拠にイスラム法と宗教的な道徳をあげていたのが、ハメネイ師が日本の憲法第9条と非核3原則を取り上げて「素晴らしい」と評価し、その精神をイランも共有している、と言ってくれたことだ。 […]

みんなびっくり「成果なし」!? ハノイ米朝首脳会談は本当に「決裂」したのか? by 藤原敏史・監督

2019年3月3日 Henri Kenji OIKAWA 0

率直に言えば、トランプと金正恩が「物別れ」に終わった(かのように見えた?)時、筆者にはむしろ、とたんに広がった「驚き」「意外」の方こそが意外だった。こと日本のメディアはこぞってトランプの「前のめり」を危惧して「金正恩に騙されそうで心配」だとか、昨年6月のシンガポール会談以降目立った「成果」がなかったことから、このハノイ会談そのものに懐疑的なのが主たる論調だったではないか? そもそもアメリカと北朝鮮が折り合えるわけがない、と決め込んでいたはずの人々が、なぜ予想通り、ないし期待通りと思わないのだろう? 喜んでいたっておかしくないではないか。 このように米朝を対立の構図で考える前提自体が見立て違いなのではないか、と指摘し続けて来たのが本サイトの一連の記事だ。ドナルド・トランプと金正恩は利害が一致していると考えた方が、昨年の新年の北朝鮮の平昌オリンピック参加表明以降、いやその前年の夏頃からの動きには、よほど合理的な説明がつく。昨年の第一回会談までの展開も、報道の多くが「意外」と言い続けたのに対し、本サイトでは想定外はなにもないと分析し、予測もほとんど的中させて来た。 金正恩にとって核武装はそれ自体が目的ではない。核とミサイルの開発は、代替わりして以降父や祖父の時代と大きく異なる政治外交を目指していても偏見で見られるだけだった国際的な立場をひっくり返す切り札と、せいぜいがアメリカの巨大核武装に標的にされ続けていること(いつでも完全な絶滅攻撃が可能)に対するせめてもの抑止力、としか考えておらず、旧世代の政治家にありがちな「世界最強の兵器」を持つことへ幻想や執着も、まったくない。 むしろ核開発も核武装の維持も、膨大な国費がかかる。その金はできることなら国内の経済発展に向けたいのが金正恩の考える現実だろう。それに韓国との国力の差もあまりに開き過ぎていて、今さら武力で祖国統一などあり得ないことも分かり切っている。金正恩にそんな大それた「野望」はないし、そもそもそんなことを考えられる立場ではないことも、少年時代はスイスの留学先で育ち国際社会の現実も理解しているのだから当然分かっているし、その行動は偏見を排除して客観的に見れば、常にそうした理解を踏まえていて、合理的であり、紆余曲折はあっても結局は、自分が北朝鮮にとってもっとも必要と考えることをかなりの部分実現させて来ている。 イデオロギーや軍事力信仰よりプラグマティズムで一致する米朝両首脳 一方のドナルド・トランプは、選挙期間中から「外国を守るためにアメリカ人の税金は使わないしアメリカの若者も犠牲にしない」と公約していた。政治的には極右ポピュリズムを支持基盤としていることの問題は多く毀誉褒貶が激しい一方で、ビジネスマンとして徹底した合理主義の面があるのも確かだ。 そのトランプから見れば、そもそも北朝鮮が本気でアメリカにイデオロギーに基づく根源的な敵意を抱いているという従来の「政治常識」は荒唐無稽としか思えないだろうし、実際に荒唐無稽でもある。北朝鮮にそんな国力があろうはずもなく、朝鮮戦争が法的に「休戦状態」のまま、朝鮮国連軍の名目で膨大な軍事力を西太平洋・東アジアに展開し続けていることも無駄としか思えないし、北朝鮮の国内体制についてのイデオロギー的な興味もない(逆に言えば、トランプはアメリカの体現するイデオロギーの「正義」も信じているわけではない)。 しかも北朝鮮には、レアメタルを含めたかなりの埋蔵資源があり、中国が世界経済の大きな中心になっている現在では、地政学的に極めて有望な条件が揃っている、アメリカの資本にとってもアジア地域最後の投資先フロンティアでもあるのだ。 つまり米朝の「戦争状態」を終わらせ新たな米朝関係を作ることと、北朝鮮の国際社会への復帰は、共に既存の東アジア国際政治の(未だ時代錯誤に冷戦構造を引きずった)構図を「今さら馬鹿馬鹿しい、邪魔」と言う考えで一致している二人の首脳にとって、プラグマティックな共通目標になっている。しかも「平和の構築」は、どちらにとっても自分たちの悪いイメージを払拭し支配を正当化できる点でも、利害は一致して来たのだ。 言い換えれば、昨年6月のシンガポールでも今回のハノイでも、米朝首脳会談で対立図式にあるのは二人の首脳ではない。東アジアの冷戦構造の最終的解消とそのための朝鮮半島の非核化を目指しているのがトランプ、金正恩双方であり、双方の率いる国にもその周辺国にも、この二人の結託した東アジア安全保障の大パラダイム転換を妨害したい意思がそこらじゅうにあって、米朝の首脳がそんな抵抗をどう乗り越えて行けるのか、が真の図式なのだ。 抵抗勢力は双方の国内にも当然いるわけで、だからこそ前回も今回も、米朝首脳会談は「トップダウン」方式(通常の、事務方が合意内容を積み上げて事前にお膳立てを揃える外交交渉の定例とは真逆)と論評されて来た。トップがどこまでやる気満々でも、いわば「ボトム」の方ではトップの発想が従来のパラダイムからすれば突飛過ぎて、なかなかついていけないのが、双方の実情ですらある。北朝鮮側では、対米実務を担当する崔善姫財務次官が事務レベル交渉での強気の主張を繰り返し、米朝会談が破談になりかけて、金正恩自身がトランプ宛の親書でその主張を否定して事態を丸く収めたこともあったし、アメリカ側ではホワイトハウスの中でさえペンス副大統領が反対派、トランプはそれでも対北和解交渉を強行するために、国務長官をビジネス界出身のティラーソンから現職のポンペオ前CIA長官に交代させた。米韓合同演習の重要性を訴えるマティス国防長官も政権を離れている。 ことトランプにとっては、そうした国内の反対をどう説得するか、あるいは騙くらかすか、黙らせる必要が大きい。いやむしろ、そこにこそトランプにとっての内政的なうまみがあるとすらいえ、前任のオバマ政権が表向きは平和主義や国際協調を掲げながら何もせず、結果として核とミサイルの危機を生んでしまった現実を事あるごとにあげつらい、非難もして来た。 今回の会談の前には「私が大統領になっていなければ、今頃は北朝鮮と戦争になっていた」とまで主張していたし、会談後の記者会見ではただオバマを批判するだけでなく、これまでのあらゆる政権が誤っていたのだとさえ言ってのけた。既存のエリートそうによるエスタブリッシュメント政治の否定こそが、この大統領のポピュリズム的手法の根幹にある、その流れにある発言でもある。 そもそもハノイ会談でどんな「成果」があり得たのだろうか? しかしトランプと金正恩の二人自身は利害が基本的に一致しているからこそ、逆に今回の会談がアナウンスされて以来「しかしどんな合意が可能なのだろう?」「どんな成果を出せるのだろう?」と言うのが、筆者の当初からの率直な疑問だった。 形だけの「成功」ならいくらでも共同宣言なり合意文書なりの文言を工夫はできるだろうが、中身のある成果となると可能なものがほとんど見当たらないのだ。 トランプが中間選挙の厳しい結果と、その結果のねじれ議会で連邦政府の一部閉鎖に追い込まれて熱烈支持層以外からの支持を失い、ロシア疑惑などのスキャンダルでも追い詰められている今、この2回目の米朝首脳会談の「成果」は起死回生のカードになり得ると言う観測はもちろんあったが、だからと言ってトランプの気分だけで左右できる話ではない。 金正恩にとっても、建国以来の対米敵視から手のひらを返したような新たな外交方針は、内政的には両刃の剣でもある。祖父や父とは比べ物にならない強力な権力基盤(金日成も金正日もある意味、労働党独裁体制構造の上に乗っかったお飾りのリーダーでしかなかった)を構築して来たこの金「王朝」世襲三代目と言えども、一歩間違えれば労働党内部や軍から「アメリカ帝国主義に屈した」と言う国家存立イデオロギーそのものに基づく大義名分で突き上げられ、最悪クーデタを起こされるリスクすらある。つまり金正恩の側でも、「成果」は出し続けなければならないのだ。 それでも、双方が建前だけでなく実は本音でも合意している「朝鮮半島の非核化」は、この二人だけでは進めようがないどころか、そもそも米朝だけでは決められないものなのだ。最低限でも朝鮮戦争を最終的に、法的・形式的にも終了させることなしに「非核化」はあり得ないのだが、これには参戦国だった中国の参加が必要になる。 最重要課題は「朝鮮戦争の終結」、その鍵を握り状況を支配する中国・習近平 昨年6月のシンガポール会談でも、文在寅韓国大統領と習近平中国主席がサプライズで合流すると言う観測がギリギリまで飛び交い、文在寅は宿泊先まで抑えていたとも言うし、金正恩は米朝階段前に2度も中国を電撃訪問して、一昨年まではアメリカ相手以上に激しい罵倒合戦を繰り返して来た(「大きいだけののろまな近隣諸国」など)関係を修復して来た。金正恩には習近平の協力を取り付けた自信があったのだろうし、だからこそのシンガポール会談にもなった。 だが会談直前のギリギリのところで、トランプと金正恩、それに文在寅が期待していた通りにはならなかった。シンガポールで前日になっても事務レベルで様々なすったもんだが続いていたのは、アテにしていたはずの中国の協力という予測(というか期待)が外れて、慌てて形だけでもいいから合意をまとめ直さなければならなくなったから、と考えるのがもっとも合理的な説明だろう。そして現に米朝がここで交わした合意は、「形だけ」でしかなかった。 今回は開催地のハノイに、金正恩がなんと陸路・列車で向かうと報じられたのも、つまりは中国領内を通過することの意味が元々は大きかった。途中で北京に寄るか、天津あたりで習近平と会う、と言うことでもあれば、ハノイ会談には大きな、それも実質的な「成果」が期待できただろう。 […]

プーチン「年内に平和条約を、前提条件はなしで」爆弾発言とトランプ「真珠湾を忘れてないぞ」リーク、三選直前に露呈された安倍外交の破綻 by 藤原敏史

2018年9月22日 Henri Kenji OIKAWA 0

「今思いついたんだが」で始まったプーチンの発言が、日本中を驚かせ、震撼させ、当惑に追い込んでいる。「なぜこんなことを」を憶測するのまでは当然だが、「『今思いついた』のは本当なのか?」などと邪推に熱中するのは、ショックのあまりなんとか平静を装おうとする必死の自己欺瞞の逃避行動にしか見えない。 「まず平和条約を速やかに締結しよう。今すぐとは言わないが年内を目標に、前提条件は一切なしで」「様々な問題は平和条約を結んでからじっくり話し合えばいい」 もちろんプーチンが本当にその場で「今思いついた」のかどうかなぞ、今さら考えたところで意味はないし、内容はともかく安倍政権を露骨に牽制するサプライズが放り込まれたこと自体、そこまで驚くほどのことではない。北方領土と日露平和条約を巡る対話はこれまでもずっとボタンの掛け違えで話がまるで噛み合っていなかったし、プーチンはボタンの掛け違えであることを百も承知で、付き合ってやるだけで安倍を喜ばせて手玉に取れると言う計算で、巧みに飴と鞭を使い分けて来ただけだ。 日本側では日本側で、話が噛み合っていないことをなんとか国民相手に誤魔化して、いかにも安倍首相のイニシアティヴでついに北方領土問題解決の糸口が見えたかのように騙して政権の人気取りに利用して来た。つまりは、いずれこう言う爆弾がプーチンから飛び出すのは、具体的な中身までは予想できなくとも、なにか恫喝もどきのサプライズがあることくらいまでは想定できていなければおかしかったのだ。 しかも、この9月の東方経済フォーラムはプーチンがその爆弾を放り込むもっとも効果的なタイミングだった。 まず安倍首相の自民党総裁としての連続3期目が掛かった総裁選が予定されていて、東方経済フォーラム出席はその直前になる。 またこの3ヶ月前には米朝首脳会談が行われ、「朝鮮半島の非核化」をめぐって東アジア情勢とその安全保障環境が急に流動化している。経済フォーラムはその北朝鮮の建国70周年記念日の直後に予定されていて、プーチン自身も中国の習近平主席も出席するのではと言われて来たが、結局そうなならなかった。 日本のメディアというのはどうも記憶力が悪いのか、憶えていてもわざと言及しないのかも知れないが、その米朝首脳会談の直後には、このウラジオストクでの会合で安倍=金正恩会談が、という「予測」がずいぶんテレビや新聞紙面を賑わせていたはずだ。もちろん、そんな「予測」自体がやたらと安倍政権に忖度しまくっただけの、異常に甘いものでしかなかったのも、当時から分かりきってはいたが。 ちなみにこのプーチン発言は、全体会合のスピーチで安倍が(主に国内向け・総裁選向けアピールで)領土問題の解決と平和条約を目指すことでプーチンと一致しているという主旨の発言を受けてのものだ。つまりプーチンにしてみれば「飛んで火に入る夏の虫」に見えたことだろう。 2016年12月のプーチン来日時にすでに頓挫していた交渉 いやプーチンについて「安倍を喜ばせて手玉に取れると言う計算」と言い切るのはいささかフェアではない。これまで日露間の領土問題については、プーチンがそこまで権謀術数を巡らして来たわけではない。むしろ率直で裏表のない、正直と言っていい発言もあった。 一方でそのプーチンに対してあえて「日本側は」とだけ書いたのは、「安倍が」とは言い切れないからだ。外務省も官邸のスタッフも、そのプーチンが時に発する裏表のない、率直な見解もちゃんと把握しているだろうし、もともと安倍首相のいう「新しいアプローチ」なるものについては最初から楽天的になれるはずもない。 だが安倍晋三首相本人となると、これがどうにも疑わしい。シベリア地域での経済協力や投資の話がどんどん(ロシア側主導で)決まっていく一方で、肝心の北方四島で合意に至ったのは経済交流案の中でも「ウニ」(総裁選の演説会での安倍首相の発言に基づく)などの養殖だけなのに、今回の訪露と首脳会談に臨むに当たっても、安倍は自信に満ち溢れていた。問題のプーチン発言を受けても、なんと満面の笑みだったではないか。新聞などは「苦笑い」と書いているが、テレビで映像を見る限りそんなものではない。本当に嬉しそうな顔にしか見えないし、なんの反論もなかった。慌てて「反論もどき」を始めたのは、プーチン発言が日本のニュースで話題になった翌日に、同行した日本の経済人との会合でが初めてだったし、「両国民の信頼関係が」というなんとも遠慮して中身のないものだった。 安倍首相だけは事態の深刻さがわかっていないのか? だとしたら恐ろしい話ではあると同時に、基本的には「またか」であり、その困った結果の蓄積が「いよいよここまで来てしまったか」というのが妥当なところだ。 1年8ヵ月前にプーチンを自分の地元の山口県長門市に招いた時も、北方四島における経済協力についての新たな「特別の制度」なるものを安倍が記者団に発表する前から、ロシア側の報道官がロシアの法律と施政権に基づく特例を検討している、と全く矛盾した内容を発表し、これはラブロフ外相によってすぐに念押しで確認されていた。つまり、話はまったく噛み合っていない、とロシア側がはっきり言っているのに、安倍は気づいていなかったようで、この新たな「特別の制度」に自信たっぷりだったし、また国内の報道でも、なぜか会談が行われていた最中と直後のリアルタイム以外では、この齟齬を全く報道しなくなった。 こうなると、こうした報道が単に政府に都合の悪いことを国民から隠すための偏向プロパガンダではない疑いすら出て来る。むしろ、新聞やテレビで大きく議論されると当然安倍首相の耳にも入ってしまうので、首相本人に聞かせないために報道が自主規制しているのではないか? いやこのプーチン来日の時には、もっと大きな問題が、なぜか共同会見の生中継以外ではまったく国民の耳に入らないようになったままだ。この時も、プーチンの非常に率直で正直な問題提起の間、隣にいた安倍首相はニコニコ笑っていただけだった。同時通訳のイヤホンは耳に入っていたと思うが… 「安倍政権のままでは北方領土は返せない」と言っていたプーチン 東京の総理公邸での共同会見で、ウラジーミル・プーチンは驚くほど率直に、裏表のない正直なことを、北方領土問題についてはっきりと、それも懇切丁寧に分かり易く説明していた。 要約するなら「日米安保条約でアメリカが日本のどこにでも基地を置く権利がある以上、我が国の安全保障上、この島々を返還することはできない。そこに米軍基地を作られてしまっては航路がふさがれてしまい、ロシアの船が安心して太平洋に出ていけなくなる」と言うことだ。そしてプーチンは「日本に条約上の義務があることはもちろん理解しますし尊重します。しかし我が国民の安全も考えて下さい。そして日本が少しでも我が国民に対する誠意を見せて下さい」とまで言い切って、安倍にボールを投げていた。 この共同会見で(つまり安倍の目の前で)プーチンはさらに踏み込んだ話までしている。自身が「有効」と認める1956年の日ソ共同宣言に遡っての、北方領土の領有権問題の発端のそもそもの洗い出しだ。 日ソ共同宣言には、平和条約を速やかに締結するための交渉に入ることと、領土問題に関しては締結と同時に歯舞と色丹を返還することが明記されている。つまり普通に読めば、当時の日本政府がこの2島の返還だけを求めていたことが分かる。 そしてプーチンは、この共同宣言の後で日本政府の方針が択捉・国後を含めた「四島一括返還」になぜか変わったことで平和条約の締結交渉が頓挫したと指摘した上で、その背景事情にまで言及を始めたのだ。生中継で聞いていた者としてはまさに驚天動地、晴天の霹靂だった。 いわゆる「ダレスの恫喝」のことである。 […]

たった三日で突然「中止」から一転仕切り直し。米朝会談をめぐるトランプの「雨降って地固まる」作戦の思惑と不安要因 by 藤原敏史・監督

2018年6月3日 Henri Kenji OIKAWA 0

日本時間では5月24日午後11時の突然のホワイトハウス発表は確かに衝撃だった。トランプ大統領がが6月12日の予定だった米朝首脳会談の「中止」を決断し、すでに通知する書簡を平壌に送付したというのだ。 その前々日には訪米した文在寅韓国大統領との会談では「延期」の可能性までは示唆していたトランプだが、前日になって「予定通り」と発言を修正していただけに、ショックはさらに大きかった。 また大統領自らの書簡というのも型破りだったし、その中身がこれまた通常の儀礼的な公式外交文書の範疇を大きく逸脱していただけに、外交の専門家でもその真意を読み解くのには慎重さが要求されるだろう。なぜこんなやり方をあえて取ったのか? もっとも、文体や語彙(通常外交文書ではまず使われない感情に直結した形容詞、例えば beautiful が何度か出て来る)の選択からして、これが外交書簡では通例の、外交官の準備した定型文ではなく、ドナルド・トランプ本人が書いた文章だったのは明らかだった。 型破りではあるが素直に読めば、トランプの真意が驚くほど正直に記されているように読めるのも確かだし、なよりもわざわざ彼自身の言葉になったことそれ自体が、勘案すべき重要な要素になる。 果たして北朝鮮側もそこに込められた(と言うかあからさまに明文化はされていた)トランプの「真意」をすぐに理解し、ほんの三日でこの「中止」騒動は収束した。それどころか「雨降って地固まる」効果にさえなっているのが現状だろう。 「中止」と言いつつ未練たっぷりのトランプの「正直な気持ち」表明 冒頭からわざわざ「会えることをとても楽しみにしていました」で始まる長い一文なのも異例だが、本当に自分の気持ちを書いているのならすんなり読解できる。会談は楽しみだったし必ず双方にとっても世界にとっても有意義な成果が出せると確信していたが、ここ数日に北側から発せられた言葉があまりに乱暴すぎて、今は有意義で友好的な会談ができるとは思えない。だが最後には「気が変わったら、手紙でも電話でも、いつでも直接連絡して欲しい」と結ばれているのは、つまりこれを一方的な決裂宣言と読むこと自体がおかしい。 日本のメディアではアメリカの核武装を強調した一文ばかりを強調しているが、崔善妃・北朝鮮第二外務次官の声明が「両国が首脳会談ではなく核対決の舞台で」とあまりに挑発的な一節を含んでいた以上、これくらいは言っておかないと、というレベルの言及で、「売り言葉に買い言葉」にしてはむしろおとなしく、躊躇すら感じられる。 トランプの書簡は自然に読めば相手をなだめながら、双方のボタンのかけ違いからうまく行くはずの交渉が感情的な軋轢で破綻するかも知れないので、仕切り直してもう一度やり直そう、と言う内容だし、極め付けで最後には金正恩が自分に直接連絡を、とまで言っているのだ。 逆に言えば、この一週間のドタバタは、いずれもトランプ自身の言葉でも、金正恩の名前で出されたのでもない乱暴な発言の応酬で起こっていた。トランプがいったんは「中止」と表明したのも、ペンス副大統領の(意図的としか思えない)金ファミリー・北朝鮮労働党を惨殺されたリビアのカダフィ議長に喩えた挑発的暴言があり、これに対して崔善妃がほとんど反射的・自動的な対抗意識を剥き出しにした声明を発表したからだった。 首脳同士の「前のめり」についていけない両国政府 これを米朝間、あるいはトランプと金正恩の「駆け引き」とみなすのはあまりに見方が安易過ぎて、肝心なことを忘れているというか、メディアはまず北朝鮮に関して自分たちが何を報道して来たのかも忘れたのだろうか? 今年に入ってからの金正恩の対話姿勢を「意外」と「予想外」と言って来たのは誰だったのか? トランプについても「前のめり」批判を続けて来たではないか? 双方ともに「前のめり」なのはその通りというか、平壌でもホワイトハウスでも、リーダーの独断と独走で事態が急転して来ている。アメリカ側では大統領本人と新任の国務長官マイク・ポンペオ(CIA長官から横滑り人事)、北朝鮮側では妹の金与正などの最高レベルの側近や金英哲・労働党副委員長(対韓国戦略担当のトップと言われている)らごく一部の幹部以外には、この首脳会談に向けた首脳の強い意思がきちんと浸透し理解されているとは必ずしも言えないし、それも無理はない。 たとえば崔善妃はつい昨年暮れまでは対米交渉担当で強面の強硬姿勢の前面に立って来た一人だったが、今年に入ってからは金正恩が自ら牽引する対話モードの中ではほとんど出番がなく、立場としても外務省の次席の次官でしかない。その崔次官がいわば「今ままで通り」のパターンの反応を示したのも、独裁体制のテクノクラートとしては自然というか、むしろありがちな(ほぼ事務的な)反応だ。 しかもリビアのカダフィ議長のように金正恩が殺されればいい、と言わんばかりの発言をしたのが、アメリカの副大統領だったのだ。ドナルド・トランプが脳卒中や心臓発作で倒れたり、ロシア疑惑で弾劾辞職となった時に後任のアメリカ大統領になるのが副大統領であるペンスだ。あるいは、トランプが大統領選の二期連続出馬を見送った場合でも共和党の最有力候補はペンスになるだろうし、そうでなくともペンス自身が共和党右派の重鎮だ。アメリカ大統領は二期までだし、仮にトランプがその二期を勤めても7年後に反故になるようなあやふやな話なら、北朝鮮が「国家核武装」を放棄できるわけがない。 だから北朝鮮のテクノクラートが強硬な反発を示すのも当たり前、想定の範囲内だったはずだとは言っても、崔善妃の声明がこれまた「両国が首脳会談の場ではなく核対決の舞台で対峙することになる」、つまりは核戦争すら示唆する内容だった。昨年までの北朝鮮外務省なら「いつも通り」の内容でも、状況がまったく変わっている中で、これではアメリカ政府内の反対派を勢いづかせることにしかならず、トランプとしては困惑するしかない。ビジネスの世界ではまず起こらない、その実感情論ですらないこうしたボタンの掛け違いは、政治特に外交の世界では、なぜかしばしば起こるのだ。 首脳の心からの感情表現が外交を劇的に動かした異例の事態? そこまで含めて計算づく? いかにも残念無念そうに、ほとんど舞台の名演技のように未練たっぷりな表情で「中止」を発表したトランプは、目に涙すら浮かべた女性たちも含めてまるでお葬式のような雰囲気を醸し出すホワイトハウスのスタッフに囲まれていた。その中でひときわ目立っていたのが、妙に神妙かつ深刻そうで生気の欠けた眼と固まった無表情のペンス副大統領だった。 もともとこのトランプ独走の米朝和解方針に反対で、まったく非現実的な火遊びと言うくらいにみなしていたペンスにしてみれば、自分の目論見通り米朝首脳会談が潰れたのだからもう少し嬉しそうな顔をしても良さそうなのが、むしろ自分が大統領の真剣さを見誤ってしまったミスと、大統領を深く傷つけてしまったことを深く後悔し、今大統領にその自分の尻拭いをやらせてしまっている事態がいたたまれないようにも見えたのは、筆者だけだろうか? […]

目指すは本気で「朝鮮半島の非核化」?! 金正恩の大胆な外交手腕で東アジア激変の予兆と、幼稚な敵意・差別意識に取り残された安倍ニッポン by 藤原敏史・監督

2018年3月31日 Henri Kenji OIKAWA 0

これまで日本の他のメディアと一線を画して、北朝鮮・核とミサイル危機の今後の流れの予測をほぼ的中させて来た本サイトの一連の記事だが、金正恩の北京電撃訪問は、さすがにまったくの想定外・予想外で完全に不意打ちを食らったことは率直に認める他ない。 しかも金正恩はみごとに習近平との「手打ち」を成功させただけでなく、「朝鮮半島の非核化」で巨大核保有国を本格的な核軍縮・核放棄に巻き込む可能性まで含む壮大な「おまけ」をゲットしてしまったのだ。こうなると逆に、その野心がこれまで予想されたよりも遥かに大きい可能性すら、考えざるを得なくなって来た。 日本のメディアは相変わらず「朝鮮半島の非核化」の意味を曖昧に誤摩化しているが、もちろん北朝鮮を射程に納めたアメリカの核兵器の全廃なしには「非核化」とはならない。日本が頼る「核の傘」の存続なぞもっての他だし、日本がそれを拒絶するのなら最早北朝鮮の核武装を非難できる根拠を完全に失うが、そうは言ってもアメリカの巨大核武装は、実は北朝鮮なぞではなく中国とロシアへの対抗上保有しているものだ。 中国の(アメリカに較べれば遥かに見劣りするとはいえ)巨大な核武装がある以上、アメリカが「朝鮮半島の非核化」に乗れるわけがないところで、金正恩がどのレベルまでの妥協点を設定しているのかが、米朝交渉の争点になると思われた。トランプも考えている落とし所は恐らく、朝鮮戦争の法的な終結と、敵視政策を止めて国交正常化交渉の開始辺りが最終ラインで、微妙な問題になるのが在韓米軍基地の地位だろうと思われた。 ところが金正恩は、そのアメリカの核武装の真の理由である中国を突然電撃訪問したのだ。そして「朝鮮半島の非核化」の努力に中国も積極的に参加する約束を取り付けてしまった。アメリカの核武装のもうひとつの仮想敵国であるロシアのプーチンにも、これから会うという説も出て来ている。 着々と対米直談判の準備を進める金正恩だが、この訪中と習近平との「手打ち」は大手メディアで盛んに言われているような、トランプとの会談が決裂した時の保険などというこじんまりとして生易しい話ではないし、そもそも北朝鮮に「朝鮮半島の非核化」つまりアメリカの核削減を求められたから怒って武力行使なんていうのは、いかにトランプでも出来るはずがない。そんなことをやれば国際社会ではアメリカに全面的に非があることにしかならず、アメリカが決定的に孤立するのだ。 言い換えれば、金正恩が訪中しようがしまいが、アメリカが米朝交渉を決裂させて武力行使に走れば中国は当然アメリカを激しく非難し武力衝突も含めた対決を辞さないだろうし、だからトランプと言えどもやるわけがない。つまり日本の「識者」が言うような「保険」のためだけなら、訪中する必要はなかったのだ。ではなぜここまでやったのか、といえば金正恩がもっと大きなことを狙っているからに決まっている。 アメリカと中国とロシアの巨大核武装がある限り「朝鮮半島の非核化」は絵に描いた餅 米朝交渉のテーマは最初から「朝鮮半島の非核化」にしかなりようがない(一方的な「北朝鮮のみの非核化」をアメリカが主張できる立場には、政治的にも軍事的にもない)が、そこでアメリカにとっての最大の障害になるのが、実は中国とロシアの核武装だ。北朝鮮が完全にアメリカの核の射程内にあるのも、この2国を狙っている結果として自動的にそうなっているに過ぎず、だからたかが対北朝鮮だけの交渉なら、アメリカはその削減に言及すらできるわけがない。かと言って、「いやいや、あくまで中国とロシアを狙った核兵器だから、では北朝鮮には撃たないことは約束しよう」などとアメリカが言えるわけもない。その瞬間に、中国とロシアとの戦争にすらなりかねないのだ。 金正恩はもちろんそんなアメリカの立場を百も承知で、あえて「朝鮮半島の非核化」という批判も反論も不可能な大義名分を主張しているのだろうし、トランプもそこは百も承知で米朝交渉の提案を受け入れた(アメリカの核削減を含む可能性がある交渉なので、当然ながら米国政界では圧倒的に反対の声が大きかった)のだが、ではどこまで言えば北朝鮮が妥協するのか、アメリカにとってはどこまでの妥協なら威信を保て国内の支持を得られるのかが、トランプが今見極めようとしているポイントだろう。国務長官や安全保障担当補佐官を自分の言いなりのイエスマンに交代させたのも、国務省や国防総省の主張する、従来のアメリカの外交常識に囚われては、トランプも動きようがなく、交渉で切れるカードがなにもなかったからだ。 ところがそんなトランプのジレンマを横目に見ながら、金正恩は絶妙なタイミングで、もう一方の当事者(というか、アメリカの核の本当の標的である)中国を巻き込んでしまったのだ。 つまりはこういうことだ。中国が核武装大国である以上、「朝鮮半島の非核化」には応じられないのがアメリカの立場だったのが、そこで交渉が硬直しそうになっても、金正恩は「よろしい、それならまず中国と核削減の話をして下さい。その結果わが国が安全になるのなら、核兵器なんて喜んで放棄しますよ。では習大兄にあなたと核軍縮を話し合うように伝えますね」と言えるカードを確保してしまったのだ。 その中国も今回の首脳会談で「誠実な努力を惜しまない」という共同声明を出してしまっている以上、そうなってしまっては建前だけでも拒否するわけにもいかない。だいたい軍縮対話の可能性を拒絶することも、今の国際社会では建前上は許されないのだ。 「国際感覚」という点では、インターナショナル・スクール育ちの金正恩は侮れない 確かに北朝鮮の政治体制は多々問題があり、現代の世界の標準からすれば「狂った」という形容すら当てはまるだろう。しかしだからと言って、その体制の下で国家指導者にならなければならなかった金正恩が無能だったり非常識だったり狂っているわけではないのは、当サイトの一連の記事でも再三指摘して来た通りだ。体制と個人の資質は別次元の問題であり、むしろ逆に世襲の絶対権力者の運命を生まれながらに背負っていればこそ、その職責に必要な資質を身につける教育が徹底される。日本でも最近妙に流行りの言葉になっている「帝王学」というのは、要するにそういうことだ。 金正恩はスイスのインターナショナル・スクール育ちだ。国際的な見識と視野の広さでは、むしろ自国育ちの他国の指導者より優れていても当然であると考えるべきとはいえ、しかし今回見せつけた手腕には、ひたすら舌を巻く。 しかも中朝電撃会談で分かって来たのだが、金正恩が狙っていることが途方もなく大きいようだ。北朝鮮のような小国がアメリカと中国に核削減・核廃絶の交渉を始めさせる可能性すら、今回の北京訪問は内包しているし、しかも両国ともそう簡単には断れないだけの理論武装も、金正恩はしっかり作ってしまったのだ。 どうも大国主導の観点でしか国際政治を見られないのが日本の外交や国際政治に関する報道の大きな欠点であり、視野狭窄になりがちなのだが、スイスのインターナショナル・スクール、つまり世界じゅうの発展途上国のエリート富裕層の子女が多い環境で育った金正恩の視野は、その意味では遥かに広く国際社会をしっかり俯瞰しているのだろう。たとえば昨年に核兵器禁止条約が国連で可決されたことを、日本では核保有国が参加を拒絶したから意味がないとして切り捨てがちだが、金正恩の戦略は核廃絶、つまり大国の核放棄をこそ求める世界の大多数の(大国ではない)国々の潮流もしっかり見据えている。 もちろん米中のような巨大核保有国がこれまで強健的に拒絶して来た核軍縮の流れの抜本的な変化を、北朝鮮のような小国が促すことになれば、その国際的な立場も一気に高まるだろう。ちなみに日本で思われているほどには、北朝鮮は国際的に孤立していない。潜在的な敵意という意味ではアメリカや中国の方がよほど嫌われている面すらあることに、日本人もそろそろ気付いた方がいい。 本音は「コンチクショウ」、でも歓迎・歓待を演出しなければならない習近平 習近平にしてみれば、本音は腸が煮えくり返っていることだろう。だいたいこれまで金正恩は、まず叔父で自分を越える実権を掌握していた中国派の張成沢を粛清・処刑し、父の代までの中国の属国であった立場とは一線を画す強硬な意志を示して来た。最近では核開発を急ピッチで進めたのと並行して中国を徹底的にバカにすることすら辞さず、ミサイルや核の実験を中国の祝日や重要な外交日程にあえてぶつけて来ただけではない。「図体が大きいだけののろまな大国」など激しい罵倒を含む声明まで出し、国連安保理決議に賛成すれば「アメリカのいいなり」で情けない、と強烈に当てこすって来た。 それがいきなり「会わせて下さい」と、金正恩の方から掌を返したように、急に下手に出た風を装って言って来たのだ。もちろん下手に出ているのもただの余裕のポーズに過ぎず、実際には中国がまったく関与しないところで米朝会談が決まってしまい、このままでは中国が取り残されかねないなか、中国としても北朝鮮とのパイプを回復させなければにっちもさっちも行かないタイミングに、見事に先手を打たれてつけ込まれている。 象徴的だったのが公式晩餐会での金正恩の挨拶だろう。30歳前後は歳上の習近平を「実兄のように」と持ち上げ、「ご多忙のなかわざわざ会う時間を作って下さった」とほめ殺しにしつつ、しっかりこの中朝首脳会談が北朝鮮主導で行われたことをアピールしているのだ。 金正恩はこのスピーチで、あえて下手に出る態度に徹したのは東アジアの儒教的な伝統に基づく長幼の順・敬老精神に基づいてという態度も崩さず、しかし国家間としてはあくまで対等である一線は決して譲っていないことを明確にしている。 もちろん古代から、朝鮮半島の諸王朝は常に中華帝国に朝貢することで支配権を承認される関係だったが、現代の国際社会ではあらゆる主権国家は建前上、対等で平等でなければならない。中国も建前上はそこは承知しているとはいえ、やはり国内向けにも大国であり地域の覇権国の地位は維持しなければならないメンツがある。金正恩に代替わりして以来、その関係を変えることが北朝鮮の大きな目標のひとつだった。これでは基本、習近平と金正恩の関係に波乱があって当たり前だが、それを外に見せられないのが習近平の弱みだ。金正恩はその習近平の「見栄」に巧妙につけ込んで、見事に自分のペースで中国を巻き込んでみせたのだ。 […]

予想外も意外性もなにもない、北朝鮮が「方針転換」したわけでもなんでもない南北交渉の展開と、トランプ=金正恩会談の行方 by 藤原敏史・監督

2018年3月10日 Henri Kenji OIKAWA 0

北朝鮮が今回「体制の安全が保証されるならそもそも核武装は必要ない」と表明したのは、一貫した態度でまったくなにも変わっておらず、驚くことはなにもない。そもそも「朝鮮半島の非核化」については、金正日時代から北朝鮮は反対していない。むしろ金正恩に代替わりしてからは、この「非核化」こそが究極の目標だった。ただしあくまで「朝鮮半島の非核化」、日本で思われているような「北朝鮮の核放棄」では済まない。安倍政権はこの二つに大きな違いがあることを誤摩化し、国民を騙し続けているが、そろそろその無理も利かなくなって来たようだ。 韓国大統領の特使の平壌訪問とその後の流れを、日本では政府もメディアも「意外だ」「予想外」と慌てふためき、報道にはこれまでの予想が誤っていた言い訳が溢れ返っているが、本サイトの一連の北朝鮮関連記事に目を通して来られた読者にとってはほぼ想定の範囲内だろう。韓国と北朝鮮の双方が危機的状況をまず早急に解消して出来る限りその状態を維持したいという双方の国益で一致していることを強く伺わせつつ、内容は極めて常識的だし、ホワイトハウス内では強硬派も一定の発言力を持ってはいるものの、トランプ自身は金正恩との直談判について乗り気であることも、本サイトではこれまで指摘して来た。 というより、合理的で現実的な落とし所が最初から見えていた以上、むしろこうなって当たり前といえば当たり前だった。そこでトランプが即答したのも、ホワイトハウス内の強硬派や日本政府からの反対意見や妨害が入る前に韓国特使に言ってしまえば、覆せない決定になるのを計算してだろう。 目新しいものは実はなにもない特使訪朝の南北合意 対話が続くあいだは北朝鮮が核実験もミサイル実験もやらないと合意したのは、どちらの実験も実行してしまえば隠せるわけもなく、交渉決裂と戦争勃発の覚悟なしには出来るわけがないのだから最初から分かりきった話だし、これも以前の記事で書いた通りだ。 この文脈で4月末の南北首脳会談で合意したことを見れば、すでに平昌パラリンピックが終わるまではなにもしないと決まっていたのを、さらにひと月延長するという効果に真っ先に気付く。韓国にとって今肝心なのは首脳会談をやること(それまでは挑発の応酬のエスカレーションや軍事的衝突は確実に回避できること)であって、首脳会談に期待される成果ではない。というより、南北で会えば建前では将来的な統一を謳わなければならないのもあくまで「建前」に過ぎず、現実的には「対話のための対話」を続けるあいだはアメリカも「斬首作戦」にせよ「鼻血作戦」にせよ軍事行動に走れないので韓国の安全が確保できることこそが、韓国にとって当面は最重要の国益なのだ。さらに米朝首脳会談まで日程に上げられたのは、そのこと自体が韓国にとってはある種の外交的勝利になる。 確かに、金正恩が米韓合同軍事演習について「従来の規模で行う限りは理解する」とまで踏み込んで合意した点は、さすがに本サイトの前記事の予測すら越えている。そこまで決定的な、アメリカを対話に引き込める(トランプが政権内の反対論を抑えられる)カードを、韓国が北朝鮮に切らせることに成功したのはたいしたものだ。 だがこれとて、北朝鮮にとってはあくまで「例年の規模」という条件つきである。つまり過剰に挑発刺激したり、とりわけ「斬首作戦」や「鼻血作戦」(核施設をピンポイントで先制攻撃すれば金正恩は黙るというホワイトハウス内で本気で検討されている無茶苦茶に荒唐無稽な計画)のカムフラージュに使ったりしない限りは、という制約がちゃんと含まれているのだ。北としては分かり易く韓国と、とりわけアメリカの顔を立てて余裕のあるところを見せながら、軍事行動や挑発は出来ないようにしっかり釘を刺し、北朝鮮の安全が損なわれない保証をちゃんと担保している。しかも例年どおりなら4月開催、つまりその後で南北首脳会談が行われる流れだ。 さすがのアメリカもこれでは断ったり騙したりできないところまでは分かっていたが、ホワイトハウスの全体はともかく(極端な強硬派が多い)、ドナルド・トランプもこの合意の意味を理解したのだろう。日本にとって最大の青天の霹靂だろうが、トランプはあっさりと(というか狙って、計算づくで)米朝首脳会談の話に乗った。 あくまで「朝鮮半島の非核化」であって「北朝鮮(のみ)の非核化」はそもそも成り立たない 北朝鮮がこれまで「非核化は議論しない」と言って来たのはあくまで韓国に対してだ。アメリカとの核削減ないし核放棄の交渉ならやってもいいというのは、明言したのが今回初めてというだけで、今さらただの確認・念押しでしかない。昨年11月末の「火星15号」初実験の成功以来、新年の訓示でも、オリンピックへの参加でも、金正恩の姿勢はまったくなにも変わっていない。たった一度の発射実験だけであえて「国家核戦力の完成」を宣言した(実際には、実用化にはまだあと数回の発射実験が技術的に絶対に必要)のは、つまりアメリカ次第ではここで開発を止めてもいい、という意味にしかならないのも、以前の記事で指摘済みだ。 最初から、北の核武装開発はあくまでアメリカの圧倒的な核の脅威に対するなけなしの抑止力の確保であることは明らかだったし、実際にも北側は平昌オリンピック前後の南北交渉のなかで「同朋に核を使うわけがない」と明言し、だから韓国とは核について交渉しないとの態度を明確にしていた。 日本ではどうも「朝鮮半島の非核化」という言葉の文字通りの、あまりにシンプルで分かり易い意味すら理解されていないらしい。いやもしかしたら、この分かりきったことが自分達にとってあまりに都合が悪く、その自己欺瞞の偽善性が明らかになってしまうので、必死で無視している自己内引きこもりというか、精神医学でいう否認症状なのかも知れない。 ならばこの際、これもはっきり言っておこう。日本が「アメリカの核の傘」に依存する限り「朝鮮半島の非核化」は実現され得ず、日本政府には北朝鮮の核武装を非難できる理由がそもそもなくなる。どう大目にみても「どっちもどっち」止まりだ。韓国や日本やアメリカにとって北朝鮮の核の脅威がなくなるだけでなく、北朝鮮もまたアメリカの核の脅威から解放されなければ「朝鮮半島の非核化」にはならない。米朝交渉は当然そういう議論になるから、アメリカがこれに乗るのはなかなか難しかったはずで、要はここをどう突破できるかがハードルとして残っていた。 おおむねの流れは金正恩の計算通りだし、韓国にも反対する理由がなにもなかっただけだ。むしろ意外性が多少なりともあったとしたら、この特使の韓国側の人選だろう。平昌五輪の閉会式に対韓国の軍事を仕切る金正哲をあえて派遣したことに呼応してもいるわけだが、文在寅政権も特使に統一省の関係者ではなく、国家安保室長の鄭義溶と国家情報院の徐薫院長という、むしろ対米パイプが強い安全保障分野のトップクラスの人員をあえて派遣した。つまりはアメリカに対してもこれは「ほほえみ外交」の「友好」レベルの話ではまったくなく、深刻な安全保障問題の真剣な議論であり、韓国政府がそこまで本気だ(=対米追従の妥協はしない)と見せつけたわけでもある。 問題の本質は、なぜアメリカの核が東アジアにあるのか 北朝鮮にとっての問題は、あくまで朝鮮半島が「非核化」するかどうかであって、単に自国の核放棄ではない。言うまでもなく在沖縄の米軍基地から韓国内の米軍基地にいつでも核兵器が持ち込める今の米韓日3国にまたがる体制は、客観的に検証可能なやり方で明白に撤廃されなければならなくなるはずだし、また米本土の大陸間弾道弾の射程に朝鮮半島が入っていることも当然協議の対象になる。 そもそもなぜ北朝鮮が、冷戦の終結後に核開発に手を染めて来たのかを、日本のメディアは必死で無視して偏向報道に固執しているようだ。そもそも間違った前提に固執している…というかはっきり言えば分かりきったことをあえて無視していわば噓をつき続けて来たあまり、自分たちが噓をついている現実から逃避して虚言に固執する精神症状に陥っているのではないか、とすら疑いたくなるほどだ。 そもそも論を言うのなら、改めてはっきりさせておこう。アメリカの核の脅威がないのなら、北朝鮮がわざわざ乏しい国力を多額の資金がかかる核開発なぞに注ぐ必要がそもそもない。今回も表明された当たり前の前提を無視する限り、この問題についてそもそも傾聴に値する議論が出来るはずがなかった。北朝鮮の「核問題」がいつまで経っても「解決」しないことにいら立つもなにも、韓国にとっても問題の本質はアメリカが(自国と自国民の防衛の範囲を明らかに逸脱した)巨大核武装を東アジアに置き、朝鮮戦争以来朝鮮半島を核競争の最前線として来た冷戦期の構図がほとんど変わっていないことだ。 言い換えれば、「朝鮮半島の非核化」は冷戦の終結時にその動きがあれば北朝鮮が核開発を始めることもなかったし、むしろ北朝鮮こそが本当は求め続けて来たものだ。核兵器の脅威に晒されない安全な状況さえ担保されるなら、それこそが金正恩にとっても究極かつ最大の目的なのだ。韓国の以前の右派の二政権(李明博、朴槿恵)もアメリカもこれを拒否して来たのに対し、今の文在寅政権の野心はまず「朝鮮半島の非核化」の実現に向けて国民を説得しきることができるかどうか、それができるなら韓国国民の総意としてアメリカにも突きつけられるところにある。 これは韓国にとって、日本の植民地支配からの独立ととりわけ朝鮮戦争以降、アメリカの属国・保護国の立場に甘んじ続け、時にアメリカの奴隷同然の行動すら強要されて来た過去を克服し、真の独立を実現する意味すら持つ。つまりは「祖国の再統一」という建前よりも実は遥かに大きい潜在的な宿願でもある。 むしろ「意外」「予想外」なのはトランプの好反応 「意外」といえば遥かに意外な展開だったのは、今回の特使派遣の成果を韓国が発表してまもなくドナルド・トランプが「非常に前向きなもので、世界にとって素晴らしいことになるだろう」とツイッターで発信したこと、そして韓国の特使とホワイトハウスで会うとすぐに米朝首脳会談に合意したことの方だ。 いかにトランプ自身が昨年6月頃には金正恩との直談判に乗り気になっていても、「火星15号」発射実験の成功で理論上はアメリカ本土を核攻撃できる能力もある北朝鮮とアメリカが「非核化」を交渉するとなれば、当然ながら北側はアメリカの核廃絶とまでは行かずとも核の削減を求めて来る。むろんすでに以前の記事でも指摘したように、北朝鮮だけが相手ならこれもアメリカにとって必ずしもあり得ない選択ではない。 だがアメリカの核の射程に北朝鮮全土が収まっているのはただの結果論で、その巨大核武装は別に北朝鮮をターゲットにしたものではない。西太平洋・東アジアに展開するアメリカの軍事力はいずれもロシアと中国を狙っている。在韓米軍も別に北朝鮮から韓国を守るために展開しているのではなく、米韓合同軍事演習も仮想敵は中国でありロシアだ。THAADの韓国への配備に中国が反発したのも当たり前で、北朝鮮をいいわけに自国を狙っていることがあまりに見え透いているからだった。 […]

「国難」?総選挙の「争点」? 北朝鮮の核とミサイルの「脅威」、そのプロパガンダと裏の現実 by 藤原敏史・監督

2017年10月24日 Henri Kenji OIKAWA 0

長崎の、「赤い背中」の写真で知られる被爆者、谷口稜曄氏が亡くなった。当時は16歳の郵便局員、自転車で配達中に背中一面に熱線を浴びた谷口さんは、定年まで郵便局を務め上げた後、写真が自分であることを公表、原爆の語り部として長崎県内を中心に学校などで自分の背中に刻印された原爆の地獄を語り続け、核兵器禁止条約の締結を求めてニューヨークも何度も国連本部を訪ねるなど、精力的に活動された。 もう12年前のことだが、終戦60年記念で作られた谷口さんが主人公のNHKスペシャルの終盤で、当時はまだ金正日体制だった北朝鮮の核開発がニュースになる。谷口さんは「アメリカがあれだけ核を持っているのに、小国だから持つな、というのでは通じない」と吐き捨てるように呟いていた。 原爆の苦しみをもっとも味わされた1人であり、戦後は「核抑止力」の名の下に敵が持つなら自国も、という核競争の時代も目撃して来た者だからこそ言えた、この根本的な道理が、どうしたことか唯一の戦争核被爆国のはずの日本では理解されないままに、北朝鮮はついに水爆を搭載したミサイルでアメリカ本土も攻撃できる能力まで持とうとしている。ロシアの下院議員が北の高官から聞いたところによれば射程9,000Km(カリフォルニア北部まで)はすでに可能で、今は12,000Km(ワシントンDCまで到達する)に伸ばそうとしているというのだ。 むろん被爆者にとってあらゆる核兵器開発は悪であり、核兵器の使用は人道犯罪でなければならない。いかに防衛目的を主張しようが(そもそも強大な殺傷能力だけでなく被爆地に深刻な放射能汚染ももたらす核兵器が、どう「防衛目的」で使えるのかも不思議な話だが)その保有も禁止されなければならないことに、アメリカでも北朝鮮でも変わりがない。 そのアメリカが巨大核武装で北朝鮮を脅し続けているのが現実であり(これも日本人の大多数は気付かないか、気付かぬふりをしている)、アメリカやその同盟国である日本が「核抑止力」というロジックでこの脅迫体制を正当化するのなら、同じ理屈は国の大小を問わず平等に適用されなければ筋が通らないのは、確かに谷口さんが指摘し、今年の平和宣言で田上長崎市長が指摘し、オバマも広島で間接的に認めた通りだ。 逆に今は北朝鮮が、その「核抑止力」をアメリカ相手に獲得しようとしている。 と言っても、むろん量的にアメリカが圧倒的に凌駕し、いつでも北朝鮮全土の核による皆殺しも可能なことは変わらない。ただしアメリカがその攻撃能力を北朝鮮を相手に使うのなら、現状でもすでにサンフランシスコやシアトル、いずれはワシントンDCやニューヨークの全滅を覚悟しなければならなくなる。 自国民の犠牲を恐れるなら、アメリカとて北朝鮮を核攻撃はできなくなった。これが日本政府が呪文のように繰り返す「抑止力」というものの実相だ。 核拡散防止条約という時代錯誤な大国の身勝手 核拡散防止条約(NPT)では、確かに一部の国を除き核兵器保有は禁じられている。だがその一部の国とは国連安保理常任理事5大国であり、それら大国の身勝手に歪められた「国際法」が不公平で道理に合わないのも、その核保有超大国以外のどの国にとっても明らかなことだ。 第二次大戦後にそれら大国の植民地からの独立が相次いでから60年70年と経ち、新興国として頭角を表す国々も増えているなか、依然「国際秩序」が旧来の、19世紀の植民地主義列強を中心とする大国の恣意に左右されている人種差別的な不平等が、いつまでも是認され続けるわけではない。 すでにインドとパキスタンが、NPTに反して核兵器を保有している。安倍首相はそのインドと日本が核協定を結び、原子力発電技術を提供するという。これでは日本が北朝鮮の核兵器開発を建前では非難できたNPT違反という不完全な大義名分すらなくなってしまうのだが、しかも安倍はこれが「対中包囲網」の一貫になるとして期待を寄せているのだから、なにを血迷っているのか理解に苦しむ。連携して包囲網を構築すべき相手をわざわざ敵視して周辺諸国の連携を破綻させようとするとは、いったいなにがやりたいのだろう? 衆院解散の理由のひとつで安倍は北朝鮮を「国難」と断じて国民の信任が必要だと、ただでさえわけが分からないことを言っているが、その北朝鮮に対していったいどんな有効な方策を、安倍政権は持っているというのだろうか? そもそも国内でも国際的にも孤立を深めるドナルド・トランプを主役・ヒーロー役とする「国際社会の連携」なんてものがあり得るのだろうか? 体制や社会状況が個人の能力と直接関係するわけがないことに、我々はそろそろ気付いた方がいい。 恵まれた経済先進国で、民主主義の体制も自由も憲法上は保証されているはずの戦後日本だからといって、2人の首相を輩出した「岸王朝」の三代目が相当に出来が悪いというのも十分にあり得るし、奇妙な独裁体制の金王朝だからってその第三世代の金正男や金正恩が有能であるかも知れないのも、十分にあり得ることだ。 個人の能力が教育環境に大きく左右されると言うのなら、岸王朝ないし岸自民党右派の戦後レジーム三代目が、お坊ちゃん私立を小学校からのエスカレーターでなんとかお情けで卒業できた程度なのに対し、金正恩はスイスのインターナショナル・スクールで学んでいる。本人の国際的な視野も(入学審査もないサマースクールの語学講座を「米国留学」と吹聴する安倍なんぞとは比べ物にならぬほど)実は広い。こうしたインターナショナル・スクールにはいわゆる第三世界の(つまり、19世紀的な植民地主義支配から独立した国々の)富裕層の子女が多く学んでいて、北朝鮮はこと金正恩の時代に入ってから、そうした国々と経済も含めて関係を深めているし、先進国や大国をあえて挑発してその権威を突き崩そうとする金正恩のやり方には、そうした先進国から見下されて来た国々から見れば、ある種の痛快さすらある。 北朝鮮労働党政権が時代錯誤の独裁体制だとしても、それを守る立場だからというだけで金正恩の知力を見くびっていい根拠にはならないし、北の労働党独裁の全体主義体制が正当化できないからと言って、それを敵視する側が絶対正義になるわけでもない。 まして20世紀後半の冷戦どころか19世紀的な植民地主義の時代の意識を引きずって、欧米の、白人の超大国に従うことが国際秩序だと言い張って、安倍やその熱烈支持層が中国を敵視し北朝鮮を「国難」と呼ぶのなら、いったいどこのガラパゴス右翼なんだという話にしかなるまい。 いやガラパゴス島の生物は孤立した環境下で独自の進化を遂げて来たのだが、日本の永田町の一部に棲息する珍獣たち(いわゆる「改憲派」)は、進化どころか退化している。 「朝鮮半島の非核化」なら、アメリカの核の傘も撤廃されなければ筋が通らない よく考えれば日本にとっては、北朝鮮の大陸間弾道弾が開発が達成されればリスクはむしろ減る。 北朝鮮にテポドンやスカッド改良型しかなかった時代なら、アメリカに自国が壊滅させられる時の最後のあがきで核攻撃できたのは、在日米軍基地だった。沖縄には冷戦期に1600発もの核弾頭が配備されていた核弾薬庫が使用可能のまま温存されており、日本の非核三原則のうち特に「持ち込ませず」を本気にしている軍事・安全保障担当者は世界のどの国にもいないし、むしろ日本政府が「核の傘」の必要性を主張しているというのは、この原則を守る気がないと公言しているに等しい。 横須賀や横田などの首都圏の米軍基地には、核攻撃に備え地下シェルター化された司令部機能がある(逗子市の池子米軍住宅にもそのサブがあると言われている)。テポドンなどしかななかった時代なら、アメリカが北朝鮮に核戦争を仕掛けた場合に備え、報復攻撃や自国防衛の先制攻撃対象として、これらの米軍施設が当然真っ先に狙われていた。沖縄は再び「本土防衛のための焦土作戦」の犠牲になったし、横須賀などの地下司令部機能まで無力化できる徹底した核攻撃があれば、首都圏3000万住人が全滅しただろう。ちなみに国際法上はあくまで自国を攻撃する敵国の攻撃能力を叩く防衛行為となり、一般市民を巻き添えに沖縄や首都圏が壊滅しても「コラテラル・ダメージ」が主張できる。もっともその時には、北朝鮮自体がアメリカの核攻撃で消滅していて、国際法違反もなにも今さら問われる対象がなくなっているだろうが。 アメリカの「核の傘」が日本の防衛に不可欠などというのは、実態はこの程度のことに過ぎない。 […]

トランプ詣で、北方領土、真珠湾、そして慰安婦問題の再燃、安倍外交は話題作りと失敗の自転車操業に陥っている by 藤原敏史

2017年1月26日 Henri Kenji OIKAWA 0

大方の予測に反してドナルド・トランプがアメリカ大統領に選出されると即座にニューヨークでそのトランプに会い、ロシアのプーチン大統領を地元の山口県長門市に招き、その10日後にはハワイを訪問してオバマ大統領と真珠湾を訪問、昨年暮れの安倍外交はまことに多忙を極めていたが、今度は新年早々、日韓関係の思わぬ悪化が懸念されている。 大使・領事の召還までちらつかせる日本の強硬姿勢はしかし、民間団体の設置した慰安婦像を問題にしているのに、なぜか韓国政府(それも大統領が職務停止中、つまり交渉相手が事実上いない)に経済協力の一方的な中断の脅しまでかけるというちぐはぐで不可解なものだ。 「慰安婦像」問題は日本国内でしか通用しない茶番 そもそも立憲民主主義の韓国の政府には、外国の圧力や合意を理由に民間の表現の自由を侵害する権限など最初からあろうはずもないのに、安倍はいったいなにがやりたいのだろう?まず日韓合意には、慰安婦像を韓国政府が直接に撤去したり禁止する約束はまったく書かれていない。 まず安倍政権は「不可逆」かつ「最終的」とされた1年前の慰安婦問題をめぐる日韓合意に韓国の国民が違反しているのはけしからん、という珍妙な主張を装っているが、これは元から安倍政権と朴槿恵政権間の合意でしかない。双方の議会の承認と批准を経たわけでもないのでは、国内の一般市民や民間団体になんの直接の拘束力も持たない。たとえば日本が人種差別撤廃条約を批准している以上、官憲が「在特会」の「反韓デモ」と称するヘイトスピーチや暴言、営業妨害行為に道路使用許可を出すことが法論理上は条約違反に該当するのとは、「国と国の約束」と言っても次元がまったく異なる。 だいたい、朴槿恵が事実上失脚した今になって再燃させた対決姿勢では、外交的に引き出せるものなぞまずない。まさかとは思うが次期政権への牽制のつもりだとしたら、かえって反発を煽るだけだし、客観的には安倍政権の言いがかりこそが「最終的」だったはずの日韓合意を反故にしようとするものだとみなされても当然だ。 そもそも、日韓合意で慰安婦像について合意されたのは、韓国政府にとっても日本の感情にも配慮することはやぶさかでもなく、大使館前に慰安婦像を設置した団体に、日本にも配慮してくれるよう頼んでみることだけだ。国際政治的にも客観的にも、日本の主張には「日韓合意の精神」という強引な独自解釈以外になんの正当性もなく、この春にも予想される韓国大統領選挙で新大統領が就任したとたんに、この合意が公式に破棄されることも避けられそうにない。 韓国は大統領が職務停止中、交渉相手もいないのに強気外交? 大使の一時帰国まで強行しながら、外交的な落とし所をまったく考えていなさそうな姿勢には、どんな動機や狙いがあるのだろう?安倍が自ら結んだ日韓合意を今度は反故にしたいだけだとしても、朴槿恵が職務停止中では交渉相手すらいない。韓国の暫定政権はもはや完全に呆れて「日本が釜山の慰安婦像を設置した学生と直接交渉すればいいだろう」というような声まで漏れ聴こえる。 純粋に国内世論を欺くだけのスタント以外には考えられないのだが、慰安婦問題を再燃させ、そんなことに利用する態度こそが「最終的」で「不可逆的」に決着したはずの「日韓合意の精神」に反している。報道では10億円の拠出ばかりが注目されたが、合意の第一は日本が改めて慰安婦問題についての責任を認め、真摯な反省と被害者へのお詫びを表明することのはずだ。 しかしこれがまったく無益な国内向けスタントでしかなく、約束を破っているのはむしろ日本側になることを、日本のメディアが指摘できないように状況を作っているところだけは、安倍政権というのは(トランプが選挙期間中にkillerと評したように)まこと、変なところで悪知恵だけは働く。政権を忖度し過ぎた偏向に自らが雁字搦めになってしまっていては、報道ももはや安倍政権が作った見え透いたフィクションの枠内でしか、今の事態を報道できなくなっているのだ。 逆に言えば、今になって当たり前の客観報道をやろうとしたら、一年前の自分達の報道があまりに偏向していて事実上の誤報であったことを、まず認めざるを得なくなる。これでは報道機関の沽券に関わるし、だからマスコミも問題の本質から逃げ続け、誤摩化しを続けるしかないのだろうが、これが安倍政権にとってはまことに好都合に働く。 一年前の合意成立時にも、日本の報道はこの合意が見るからに二枚舌のまやかしだと分かっていながら批判しなかったし、慰安婦像をめぐる言及に至っては文言もまったくの空約束の努力義務に過ぎず、安倍の顔を立てるためだけに入っている形だけの条項でしかないことも指摘しなかった。 ぶっちゃけ、ひとつくらいは日本側の意見が通った形にしなければあまりに安倍の立場がないから空約束を入れた、というだけだったこの条項が誤解されがちなのは、日本での報道が最初から偏向していたからだ。そもそも、なぜ唐突な日韓合意に至ったのかの分かり切った経緯すら、安倍政権におもねて国民から隠し続けたのが日本の大手メディアだった。 「日韓合意」をめぐる日本側の誤解(というか安倍政権の世論操作) 改めて確認しておくが、釜山の新たな慰安婦像設置どころか、ソウルの日本大使館前の慰安婦像ですら、撤去なぞまったく合意されていなかったし、立憲民主主義の韓国憲法はそんな権限を政府に認めていないのだから、そもそも法論理上あり得ない。 それどころか、慰安婦像はこの合意の焦点でも論点でもまったくなかったのが実際だ。一昨年暮れの日韓合意がなぜ唐突に出て来たのかと言えば、安倍政権が慰安婦問題について言を左右して日本の責任を誤摩化し続けることが出来なくなったからだ。 はっきり言ってしまえば、この合意も10億円の拠出も、本来ならまったく不要だった。 慰安婦問題の外交的な決着ならば河野談話で済んでいるはずで、日本軍が「慰安婦」と称した強制売春の性奴隷制度についての日本政府の責任と謝罪も確定しているのに、その謝罪表明が外交上の建前の妥協に過ぎないかのように国内的には吹聴する、「本音と建前の使い分け」と呼ぶにはあまりに稚拙な二枚舌を続けた結果が、今の事態なのだ。 第二次安倍政権に至っては「河野談話の再検証」までやらかした結果、かえって河野談話がまったく正当な、当時の日本政府が自主的な判断で主体的に出した談話だったこと、韓国政府は助言や協力を求められただけで、むしろ不当と言っていい圧力で文言が変わったのは日本国内の自民党右派の抵抗によるものだったことまで、明らかになってしまった。 それでも安倍政権は慰安婦問題について曖昧な態度を取り続けて来た。2015年にアメリカ議会に招かれ両院総会で演説したときには、元慰安婦の被害当事者が傍聴していたのになにも触れなかったことが、アメリカの政界やメディアで非難の的になり、とくに日本の政界が「親日的」とみなす共和党から厳しい批判が出て来ていた。 日本の偏向した報道では未だに真珠湾のだまし討ちがアメリカ世論の反発を招きかねないかのように語られがちだが、現代のアメリカでも南京大虐殺や慰安婦問題の方がよほど日本の戦争責任が問われる人道犯罪であり、安倍政権の歴史修正主義的な傾向は一貫して批判と強い警戒の対象だった。 オバマの広島訪問でも、原爆投下の謝罪がなかったのは、慰安婦問題でも南京大虐殺でも責任や謝罪を曖昧にし続ける安倍首相が相手では謝罪するわけには行かないというのが、実際のホワイトハウス内での議論だった。 慰安婦問題での謝罪を目立たせないための10億円 2015年の前半には、安倍は8月に出す「戦後70年談話」で河野談話や村山談話、戦後60年の小泉談話を覆そうと躍起になっていた。しかし自ら集めた有識者会議の提言には逆らえず、「深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいた」と慰安婦を意味する言及も含めざるを得なくなったものの、無駄なあがきで「慰安婦」とは直接言わなかったので、国会答弁で確認を求められると、とたんに言を左右して答えられないまま逃げてしまった。 […]

「負け犬のアメリカ」が勝利したトランプ次期大統領と、対米従属の日本「戦後レジーム」の終焉 by 藤原敏史・監督

2016年12月12日 Henri Kenji OIKAWA 0

トランプ政権で副大統領となることが決まったペンスが、ニューヨークで評判のミュージカル『ハミルトン』を見に行った。カーテンコールを浴びた俳優陣の中央の、主役の黒人男性が一歩前に出て、ペンス次期副大統領の臨席を感謝し、自分達の舞台はアメリカの価値を謳い上げるものだと思うと述べた上で、次期政権の重責を担うペンス氏をインスパイアするものがあったと信じる、と挨拶した。 まったく礼儀にのっとった、当たり前の発言内容だった。しかしトランプ次期大統領はツイッター上で激怒し、俳優たちを非礼だと罵倒し、謝罪を要求したのである。 トランプ以後のアメリカの今後を占い、象徴する出来事だった。演劇や映画は「娯楽」か「ソフトパワー」の「コンテンツ」扱い、文学でさえ「趣味」レベルの文化としか政治の文脈では見られていない日本では、なかなかピンと来ないかも知れないが、アメリカにおいてはハリウッド映画やブロードウェイ・ミュージカルは大衆娯楽であっても…いやアメリカの大衆芸術であるからこそ、アメリカ社会の総体に価値観を発信し、観客の1人1人とその価値観を共有するものであり続けて来た伝統と責任を持っている。 政治家が人気の映画や舞台を見てインスパイアされるのは当たり前と受け取られ、本音ではこれっぽっちもそんな気はなくとも、褒め言葉でインスパイアされたと言わなければならないのが礼儀だし、本音ではただの娯楽や絵空事と思っていても、その相手を社会に重要な発信をする特別な一員たるアーティストとして敬意を示すのが常識だ。 映画や舞台が多くの人が見るものだからこそ社会に価値を発信し、また社会の共有する価値を反映もすることが、二百数十年の歴史しかない、それも多民族国家であるアメリカを、ひとつにまとめて支えるのが演劇や映画や音楽の大衆文化だというのが暗黙の共通認識なのだ。だがドナルド・トランプは昂然と、そのアメリカをアメリカというひとつの国をまとめて来た文化を否定してしまった。 ましてや『ハミルトン』は移民の孤児だったアレクサンダー・ハミルトンが猛勉強で出世し、アメリカ独立戦争でジョージ・ワシントンの副官として活躍、合衆国憲法の草案起草にも関わり、初代財務長官も務めた、いわば建国の父の物語で、プエルトリコ系移民二世が脚本・作詞・作曲を手がけ、ワシントンなどアメリカ史上の偉人を非白人の黒人やヒスパニック系が演ずることも話題になっている。その主演俳優が誇りを持って語った自分達の舞台の内容と、彼が黒人であったことへの反発、つまりは人種差別と受け止められても反論はできない文脈で、トランプは新政権の露骨な白人至上主義の傾向を印象づけてししまっている。しかもトランプは恐らく、わざとそういうメッセージ性を意識して、この謝罪要求の暴言を発信したのだ。 選挙に勝ったとたんにトランプがキャンペーン中とがらりと態度を変えたと言われた、これからはアメリカは「ひとつのユナイテッドな人々だ」と語ったはずの勝利演説は、いったいなんだったのか? 「タイム」誌は年末恒例の表紙の「今年の顔」にトランプを選び、そこにつけた見出しは「United」ならぬ「Divided State of America」、「分断された国家アメリカ」だった。 トランプ、クリントン双方の選挙後の演説に見る転倒した明暗 もっとも、そのドナルド・トランプの選挙後第一声ほど、空虚で出来の悪い大統領選挙勝利演説もなかった。 トランプは tremendous とか wonderful とか amazing、beautiful、great と言った中身のない形容詞を繰り返しただけで、印象に残ったことと言ったら10歳になるという息子が、興奮する父親のそばでいかにもふてくされて退屈そうに立っていた姿だけだ。午前3時だし眠かっただけかも知れないが、いやその父にしても、この勝利に本当に興奮できていたのかどうかも疑わしい。 翌日の日本のメディアは「和解を呼びかけた」「大統領らしさ」などと一応は褒め言葉一色に染まったが、「One united people」の下りは8年前のバラク・オバマの引き写しでしかない。初の黒人大統領への敵意があるからこそ、和解とひとつのアメリカを呼びかけたことには大きな意味があったが、これまでの選挙戦でさんざん自国民の一部を口汚く罵り、現大統領が黒人であることをあてこすりつつ「無能」と攻撃し、イスラム教徒の入国禁止、メキシコ国境に壁を作る、妊娠中絶をした女性は処罰すべきなどなど、人種民族や性の差別に基づく分断を煽ることになんの躊躇も見せなかったトランプが「あなた達すべての大統領になりたい」と言ったところで、ただの取ってつけた欺瞞でしかないならまだいい方で、最悪「これからは俺(たち)に従え、それがひとつのアメリカだ」と言っている意味にしかならない。 案の定、トランプから『ハミルトン』のカーテンコールをめぐる暴言が飛び出したことで、「俺に従うのがひとつのアメリカ(気に入らないなら処罰し追い出すぞ)」のメッセージが明確になっただけではない。米国内では人種差別が動機の落書きや中傷だけでなく、学校でのいじめや、襲撃事件まで頻発し、激化している。オバマ夫人のミシェルを「ハイヒールを履いた猿」などとフェイスブックに書き込んだNPOのトップの投稿に「いいね」をつけた町長まで出て来る始末で、しかもどちらも女性だった。 選挙期間中からKKKの関連団体が倍増しているともいわれ、その動きが目に見えて活発化しているとの指摘もある。トランプが解き放ってしまった乱暴で露骨な白人至上主義は、その勝利であられもない暴走を始めている。非白人層には不安と絶望と恐怖が広がり、白人層でも良識ある市民の怒りもあって、州全体としてはトランプが勝ったテキサス州でさえ都市部で反トランプのデモが起こっている。そうした反発がもっとも激しい、多様にしてユナイテッドでもあるニューヨーク市の中心部、五番街のトランプ・タワー最上階にトランプが居座り続けていること自体、自分がこれからの支配者だと文字通り「上から目線」で睨みを効かせるジェスチャーにもなっている。だからニューヨーク市民が困惑していると報道されればされるほど、トランプ支持者は喜ぶという仕掛けだ。 […]

脱・対米従属を軸に野党結集を-宇宙人・鳩山由紀夫元首相が訴え

2016年2月8日 Henri Kenji OIKAWA 0

鳩山由紀夫・元首相は2月4日に日本プレスセンターで「辺野古新基地の真相」と題して講演した。 「私は宇宙人。宇宙人は地球人より広い視野で世界を見られる」 と語り、会場の笑いを誘った鳩山氏は野党再編について司会者から尋ねられると、 「一番大事なことは、多くの国民が安倍政権がこのままでは不安だと思っていることだ。安全法制であったり、アベノミクスが国民には何の役にも立たなかったということが証明されつつあるのに、固執している点だ。平和も豊かさも双方共に崩れかけている。安倍政権に代わる政権を創らなければならない。ただ、寄り合い所帯のまま政権をまた創ったら、瓦解してしまう。根本的にこういうことは護ろうということを核にして、共鳴した政治家が集まる環境をつくる必要があるのではないか。新しい政治の流れを国民は期待している。共産党が首尾一貫して筋を曲げないで来ていることを私は評価したい。共産党が共産主義の政党だと、必ずしも主張はそうではないが、思われているから、野党共闘が進んでいない」 と述べた。 古巣の民主党について 「今の民主党はどちらを向いているか分からない。安全保障・TPP・消費税においてハッキリしたメッセージを出せない政党ではダメだ。しっかりしたメッセージを出して、個々の政治家が合流して大きな流れを創っていく必要がある。そこに既存の政党が合流してもいい」 と述べた。 その上で、 「ある総理経験者に話を伺ったとき、自分が総理の時にここまで米国によって日本が動かされているとは分からなかったといっていた。これからの政治を創るには対米従属から如何に脱却するかが一番のキーになり、それを結集軸にしていくべきだ」 と述べ、野党再編の基軸は脱・米国依存にあると強調した。 会場では500人近くの市民が鳩山元首相の話に聞き入った。 情報にはコストがかかります。France10はタブーなき自由な報道のために皆様からの御寄付によって支えられています。

岐路に立つアメリカ大統領選挙の真の争点は、資本主義がこのままでいいのかである by 藤原敏史・監督

2016年2月4日 Henri Kenji OIKAWA 1

大統領選の予備選挙が始まり、アメリカ政治は2008年にバラク・オバマが選出され、「チェンジ」に期待が集まっていた当時には思いも寄らなかった事態に、様々な意味で突入している。巷間もっとも話題を集めたのはまず、目立った候補がいないと言われて来た共和党側でドナルド・トランプがいきなり出馬し、アメリカ政治のプロからはキワモノの泡沫候補と冷笑されたはずが、想定外のトップ支持率を集めていることだった。 だが候補者選び予備選挙の初戦アイオワでは、そのトランプがこれまた想定外の敗退で共和党の第二位に終わった。だからと言ってそのトランプの過激な人種差別発言などを危惧して来た国際社会が安堵できるわけでもない。第一位に躍り出たのは共和党内でも異端児の、極端な反オバマ強硬派で宗教右翼、むしろトランプ以上に過激かも知れないテッド・クルーズだ。筋金入りの銃所持擁護派で強硬な妊娠中絶反対論者、主な支持基盤はティーパーティーと呼ばれる草の根宗教保守運動で、自身は父親がヒスパニック系(亡命キューバ人)とはいえ、かなり頑迷な排他主義や外国敵視、経済的には保護主義を標榜して支持を集めて来た。ティーパーティーのアイドル的な存在だった前回の大統領選の共和党副大統領候補サラ・ペイリンはいち早くトランプ支援に動いて来ているが、そのトランプ旋風が多分に一時的な流行めいた熱狂に終わるとしても、その話題性が以前からある草の根極右勢力を掘り起こし、自信を持たせ、クルーズ候補をトップに押し出したとも言えよう。 対する民主党の側では、これまで共和党に目立った候補もいないし次も民主党の大統領だろうと言われ続けて来たところへ、副大統領のジョー・バイデンが不出馬を表明し、いよいよ初の女性大統領の誕生がお膳立てされたはずのヒラリー・クリントンが、国務長官時代に職務に私用のメールアドレスを使っていた問題くらいがアキレス腱と思われていたのが、気がつけばバーニー・サンダース上院議員に肉迫されている。アイオワ予備選でクリントン陣営は一応勝利宣言を出したものの、アメリカのメディアでは軒並み(クリントン支持を表明しているニューヨーク・タイムズも含め)Virtual Tie, 事実上の引き分けと報道した。 74歳とは思えぬ精力的な活動でとくに若年層の支持が厚いとされるバーニー・サンダースは、この予備選挙を受けて力強くこう宣言した―「ここに始まったのは、政治革命だ」 目立った争点がないと思われて来た大統領選 つい数ヶ月前まで、次の大統領選挙はよくも悪くも争点がない選挙だと言われて来た。もちろんリベラル対保守、福祉国家か小さな政府か、移民や女性やマイノリティに寛容で多様性を重んじるかどうか、銃の所持や妊娠中絶の規制といった、民主党と共和党の伝統的な対立点はあり続けて来たが、オバマ政権下でリーマン・ショック後のアメリカ経済は一応の順調な回復を見せ、雇用統計も良好で、中央銀行にあたるFRBがついに念願のゼロ金利からの脱却を決定できたほどだ。つまり経済政策は、オバマ政権の推進するTPPに共和党保守派を中心に保護主義の観点での反発が出ている以外は、目立った争点にはなりそうになかった。 外交安全保障でも、オバマ政権のイラク撤退やシリア内戦への不介入が結果として中近東情勢の流動化、イスラム国の台頭や、シリアを中心に激増する難民といった結果も招いているにせよ、共和党保守派でさえ地上軍を投入しての本格介入など、とても公約できない。クルーズやトランプはイスラム国支配地域を絨毯爆撃しろ的なことも言ってはいるが、現実の戦争のやり方としては無論あり得ないブラフに過ぎない。また共和党と言えどもイスラエルで迷走と過激化に突っ走るネタニヤフ政権を全面支持するとはさすがに言えそうになく、対するオバマや民主党でもそのネタニヤフを切り捨てパレスティナ独立に積極的に動くとまでは言えない。民主党内の良識派がエジプトの軍政独裁やサウジアラビアの封建独裁をアメリカが支援し続けるのは問題だと思っていても、それらの国との関係を根本的に変えることもまた、今のアメリカにとっては不可能だと思われて来た。実のところ、今後の世界秩序の行方について、現状のアメリカ政治が新たに決断できることはほとんどなく、大統領選挙での対立点にもなりにくい。 外交で民主党と共和党で賛否が分かれそうなことと言えば、イランの核開発をめぐる合意の扱いぐらいで、キューバとの歴史的な国交回復と和解路線ももはや不可逆的なものだし、たとえば日本にとっては最大の関心事となりそうな対中外交姿勢や北朝鮮の核問題では、どちらの陣営で誰が勝とうが、大きな変化にはなりようがない。共和党にはまだ、一応は共産主義国家である中国への警戒感は根強いとはいえ、その中国が米国債の最大の保有国だし、アメリカの消費者や小売業は中国からの安価な輸入品への依存度が高いだけでなく、アメリカでもっとも成長が望めるIT産業の多くが中国国内の工場を生産拠点にしている。しかもメディアやエンタテインメント産業を中心に、中国とその周辺諸国は今後の有望な巨大市場だ。ロシアのプーチン政権に対しても、共和党になっても今のオバマ政権の方針以上に強硬姿勢に出ることは考えにくいし、クルーズやトランプであればどちらも基本アメリカ国内優先の保護主義、孤立主義の傾向が強いし、ウクライナ問題をめぐるEUとの協調がむしろ難しくなることくらいしか想定出来ない。 そして海外からみれば経済や外交安全保障がどうなるのかにいちばん関心が向くのは当然としても、アメリカ国内でみれば最大の争点は、同性婚の禁止を連邦裁判所が違憲と判断した今では、妊娠中絶の是非と、銃規制になりそうに思えて来た。 反ワシントンDC政治、既存の政治への不信の潮流はどこから来たのか 言い換えれば、民主党でも共和党でも、ワシントンDCから見えるアメリカ政治の現実的な枠組みを前提に働くプロ政治家にとっては、その枠内でさほどの選択肢の自由もなく、新味も出しにくかったのが今回の大統領選のはずだったし、その争点のなさが有権者離れにつながりかねないほどだった。一年前には民主党がヒラリー・クリントンつまり元大統領夫人、共和党の本命がジェブ・ブッシュつまり前大統領の弟で元大統領の息子というのでは、エリート同族政治に飽き飽きすると言ったような論評すら多かったことが、今となっては嘘のように思える。 共和党本流の候補だったはずのジェブ・ブッシュは気がつけばまったく影が薄くなり、アイオワ予備選挙でも最下位だった。今後共和党主流派の候補は、上院の外交委員長も務める(日本の安倍首相訪米時の議会演説を歴史問題で厳しく批判もした)マルコ・ルビオに絞り込まれそうだ。 そのルビオ議員も両親が亡命キューバ人移民の二世だ。 白人エスタブリッシュメントのブッシュ家が消え、保守系・共和党の有力候補二人がヒスパニックというのも、バラク・オバマが初の非白人・黒人大統領となって以来、アメリカ政界の人種状況はかなり変化したとも言えはするし、ヒスパニック系人口の増加でその票の取り込みは民主党だけでなく今や共和党にとっても必須の戦略になっている。 ただしオバマが進めようとして来たいわゆる不法移民への現実的な対応については共和党支持層からの反発は強く、マルコ・ルビオ自身も以前は現実的な寛容策を目指していたのが主張の転換を余儀なくされているし、ドナルド・トランプに至っては「メキシコ国境に壁を」「連中は犯罪者と麻薬中毒者」と言い放って支持を広げた。ラテン・アメリカ諸国からの新移民に仕事を奪われるという危機感と、ラテン・アメリカがアメリカ国内で消費される麻薬の最大の産地である現実は、アメリカに移民しその社会に順応し、存在感を高めつつあるヒスパニック系の内部に、分断と亀裂を産み出し始めてもいる。クルーズやルビオのようなヒスパニックの血統の大統領候補の方が、その意味では対移民強硬姿勢は主張し易くもなるだろう。既に市民権を持つヒスパニック系アメリカ人の中には、新規の、不法移民として入って来る人たちと自分達は違う、一緒にされたくない、新移民や麻薬犯罪のせいで今確保出来ている自分達の立場を危うくしたくないと思う者も、当然ながら少なくないのだ。 浮動票の草の根保守化の一方で、「極左」サンダースの躍進 この大統領選挙の意外な流れを、我々はどう捉えるべきなのだろう?トランプの移民排斥や暴言へのにわか支持が掘り起こしたとも言える頑迷な保守層が既存のティーパーティーを支持基盤とするクルーズへの支持に取り込まれつつあるのが、アイオワ予備選挙で見えて来た共和党側の流れだろう。こうした極右の伸張を「極右ポピュリズム」と断ずるのは簡単だし、ヨーロッパが直面する難民危機やパリの同時多発テロ事件を受けたフランスの国民戦線やドイツのペギーダの隆盛と同じ文脈で論ずることも、決して間違ってはいない。 だがアメリカがヨーロッパと大きく異なるのは、トランプ旋風やクルーズの躍進の一方で、いわば極左と目されるバーニー・サンダースもまた勢いを持ちつつあることだ。極右と極左で主張はまったくの真逆に見えるが、あえていわば「異端」候補の躍進をひとつの事象として総合的に捉えるならば、どちらの側もこれまでアメリカの大統領選挙で争点になるとは思えなかった、ワシントンDCの「常識」からすればあり得ない主張を展開しているだけでなく、その支持層にも実は共通するものがある。 そんな馬鹿な、と思われるかも知れない。トランプの集会に押し掛けて歓声をあげる群衆やティーパーティーの中心は低学歴の(教育のない)プア・ホワイト、言わば「田舎者」で、年齢層は中年かそれ以上であるのに対し、サンダース支持層には大学生か大学を出たばかりも多く教育水準が高い、インターネットやSNSを使いこなす若年層が多いとされ、45歳で区切った世論調査では、民主党支持層のなかでヒラリー・クリントンに大きな差をつけている。最初の予備選挙となったアイオワ州や次のニューハンプシャーでサンダースが強さを見せているのは、これらの州には大きな大学もあって、その学生の支持も大きい。 前者はアメリカ国内の辺境に引きこもって乱暴で教養がなく、労働者階級や小規模事業者が排外主義に洗脳されていて、後者は…と、いくらでも正反対の部分は指摘できる。だがそうした表面的な違いの奥底では、どちらの支持基盤も、アメリカの経済産業構造のなかで進行する中間層の破壊の結果をもっとも直接的に受けている人たちだ。 オバマ政権でアメリカ経済は復調したように見えるが イラク戦争の失敗と泥沼化、そしてリーマン・ショックでジョージ・W・ブッシュ政権が失墜し、アメリカの復活への期待を託されたオバマは、この7年間でガタガタだったアメリカ経済を確かに再生させたが、その方向性は彼が大統領選挙で呼びかけた「チェンジ」とは必ずしも一致しない。具体的な公約としては最大の目玉だった医療の国民皆保険制度で多くの妥協を強いられ中途半端な成果しか挙げられなかったのも象徴的だが、リーマン・ショックの教訓に学んだ金融業界の規制でも、多くの一般国民から見ればウォール街に押し切られたような結論しか出せていない。 実はブッシュ政権時に既に始まっていたことではあるが、オバマの7年間のあいだに、例えば大資本の大規模チェーン店はどんどん市場規模を拡大させ、かつてのアメリカの消費生活を草の根、底辺から支えて来た小規模自営業は、大都市でも、地方でも、多くが倒産を余儀なくされて来ている。 […]

フランス保守派から左派までがイスラム国・空爆に反対する3つの理由

2014年10月20日 Henri Kenji OIKAWA 1

オランド政権がイラク&シリア領土内のイスラム国・空爆に荷担したことについて、首相経験者や政党党首、国民議会議員(下院議員)、欧州議会議員などから反対の声が続続と上がっている。理由は大別して3つある。 (1)軍事介入によってフランスを狙ったテロの危険性が増す ドミニク=ドヴィルパン元首相は9月29日にRTL(フランス国営ラジオ)の番組に出演して、 「空爆にフランスが参加することでわたしたちはますます危険にさらされることになる。これは明白な事実だ。空爆によって世界各地に散らばるテロリストをわが国に呼び込むことになる」 と警告した。 反テロ行政の長を1980年代に務めた最大野党・UMP(民衆運動連合)のアラン=マルソー国民議会議員も「今回の軍事介入はフランスを危険にさらすことになる」と指摘している。マルソー議員は9月23日にRTLの番組に出演して、イスラム国に対する米仏を初めとする連合について「ひじょうにもろいものだ」と指摘し、「(空爆に参加した)フランスはアメリカと違って海外にいる自国民を護る能力を欠いている。イスラム国支配地域では、3~4機のラファル戦闘機しか飛ばせていない。わたしたちはイスラム聖戦士たち(jihadistes)の標的・敵になる恐れがある」と警鐘を鳴らした。 (2)空爆は問題を解決しない ドミニク=ドヴィルパン元首相はさらに「軍事介入はテロリズムを育成・醸成する」と指摘した上で、「この種の空爆や軍事介入によって、テロリスト集団の除去という私たちが期待する結果はもたらされないと、我々は過去の経験から知っている。50-60年の経験から、いやここ10年の経験だけでも、軍事介入はテロを根絶するのでなく、テロの土壌をつくってしまうのは明らかだ」と付け加えた。 左翼党・党首にして2012年大統領候補だったジャンリュック=メランション欧州議会議員は9月26日に仏国営放送「France2」の番組に出て 「以前よりもはるかにひどいカオス・混沌が軍事介入によってもたらされることを世界の人々はまず知るべきだ」「誰がイスラム聖戦士を財政的支えているのか……ということにもっと関心を向けるべきだ。それはサウジアラビアやカタールの君主・国家元首たちだ」 と論じた。 (3)フランスはNATOの枠組み内で行動すべきだ 左翼党のフランソワ=アザンジ国民議会議員(下院議員)は9月24日に議会で 「イスラム聖戦士に抵抗する人たちを、政治的・人道的・財政的に支援するような形で、軍事支援するためには、アメリカによる軍事連合ではなくNATO(北大西洋条約機構)の監督下で、軍事介入が行われる必要がある」 と述べ、米国中心の枠組みでの軍事介入を批判した。 また、フランス共産党のピエール=ローラン上院議員は 「フランスの自由と独立を担保するためには、NATOと連携することが必要だ」「NATOに率いられた介入のみがフランス軍を派遣することを正当化できる唯一の方法だ」 と、主張した。 ※映像は仏国営放送「France2」にドヴィルパン元首相が出たときの映像です。 France10は皆様の御寄付によって支えられています。

8月15日 DVDリリース オバマが涙した「大統領の執事の涙」映画評 by 吉田衣里「げんこつ団」団長

2014年8月1日 Henri Kenji OIKAWA 0

この邦題の「涙」がいけない。 この「涙」のおかげで、どんな”感動”や”賛美”等が仕掛けられているのかと身構えてしまった。 原題には、「涙」無し。実際は、事実を元に真面目にしっかりと作り上げられた歴史ものだった。 観賞後にはこの邦題の「涙」が、例えばどんなニュースでも安易に安いメロドラマにしてしまう感覚をとても良く表していることに、笑った。これがあった方が観たいと思う人が増えると思った、その感覚が分かり易過ぎて笑った。しかもそれがバレバレで、「”涙”、ない方がいい。」と思う人が実際には多いだろうことにも笑った。 社会の歴史に編み込まれた家族の歴史として完璧な出来 さて「大統領の執事(の涙)」。アイゼンハワーからレーガンまでの7人の大統領に仕えた黒人の執事、ユージン=アレンという実在の人物の人生を発想の元にして、実際の時代背景や史実に則って作られている。黒人を人と思わぬ時代から、公民権を得るも黒人に対する根強い差別が残る時代、それを覆しやがて黒人の大統領を産むまでになった、アメリカの歴史。その激動の時代に大統領の執事となり、その仕事を続けた男の家族の物語が、編み込まれている。実際の歴史、事件、風潮に、執事の人生や息子の人生、そのそれぞれ思いや信念が、編み込まれる。その編み込まれ方が、完璧だった。 自分を殺し白人社会に入り込むしか生きる術がなかった父、黒人としてのプライドを強く持ちそれに疑問を抱く息子。そのどちらも理解し支えようとしつつ一時は酒に溺れてしまう母と、ベトナム戦争で命を落とす弟。こう箇条書きにしてしまうと、この時代の黒人家族の縮図としてそれぞれがとても分かりやすいパズルのピースで構成されているのが分かる。しかし背景にあるのは歴史的事実でありその縮図には当然強い説得力がある。またその描かれ方も物語も構成も、見事にそれぞれの人生を表している。可能な限りそれらを余す事なく詰め込みつつ、どの立場にも寄る事なくそれを真摯に丁寧に描く。社会の歴史に編み込まれた家族の歴史として、それは完璧だった。 物語も構成も完璧すぎるけど…… 差別問題。私事で恐縮だがそれは個人的にとても敏感になってしまう問題であり、ちょっとでも偏った表現や描写があったら激怒してしまいそうで嫌だった。逆に心の底にある感情を鷲掴みにされる台詞の一つでもあったら号泣してしまいそうで嫌だった。しかしそれはどちらもなかった。もちろん激怒したかったわけではないし、号泣を期待していたわけでもなかったが、そのどちらもないとなると、勝手に拍子抜けしてしまう。何かが物足りない。 素晴らしい映画だったし感動もした。もう一度観たいとも思った。しかし物語も構成も完璧すぎて「お見事」という感想が先に立ってしまった。例えば、何かに偏った視点、何かに主観的になった描写、何か一部だけを殊更強調する部分があった方が、簡単に感動を引き起こせるだろう。それは、デッサンの一部がちょっと狂った、もしくは意図的にデフォルメされた絵画の方が人の心を揺さぶるのと同じだろう。ただ、この映画でそれは不必要なはずだ。これに関して言えばそれは結局、「大統領の執事の涙」の、「涙」の部分だろう。そういうものは、要らない。つまりそういうものが足りなかったわけではない。もしあったらもっと拍子抜けだ。邦題に拍手だ。 「涙」無しに泣ける涙。それはとても、価値が高く重要 これはあくまでも私の個人的な感想だが、黒人大統領が誕生してやっと初めて一旦めでたしめでたしとなるこの物語、しかしそこで”めでたし”としてしまった所に、釈然としていないのかもしれない。いや別に大々的にハッピーエンドにはしていないし、史実としてそれはこの家族には丁度そこに描かれたくらいのハッピーエンドなのだという事はとてもよく分かる。アメリカの黒人問題を題材にしている以上、これで良いのだ。ただ勝手な思いとしては、国内外関わらず差別や蔑視というものに関して今後にも残る課題を、或いはもっと深く、どの人間の中にも不変的に存在するものとして、何か一つ、心に斬りつけ刻むもの、私にはそれが、欲しかったのかもしれない。それは「涙」ではないが、世界の多くの人が心を揺さぶられるものだろう。 ただ、当事者として直接的に黒人問題と対峙していない自分があれこれ言うべきでも考えるべきでもないと言えばその通り。 これは、アメリカの映画だ。全米が泣けば、それでいい。 イメージとして、メジャーなアメリカ映画には感動や賛美等の「涙」要素が必要不可欠と思っていたが今はそうではないのかもしれない。 それでも全米が泣くなら、その方がいい。それなら私も、共に泣きたい。 「涙」無しに泣ける涙。それはとても、価値が高く、重要に思う。 歴史と家族を完璧に編み込んだ物語の重要な結び目 …以下、少々ネタバレになりますので読みたくない方は読まないで下さい。 縁を切っていた息子の活動に初めて顔を出した父。その父に対する息子の台詞が「仕事を失うよ?」。そして、それに応えての父の台詞が、「お前を失った」。これが、歴史と家族を完璧に編み込んだ物語の、重要な結び目となっていた。またもや勝手なイメージながら、アメリカ人にはこれがズドンと来るのであろう。もし泣くならここが泣くポイント。どんな人生においても不変的に重要な、家族愛。それはどんな人間にも不変的なはずなのに、私には何故これがズドンと来なかったのか。 乱暴に言うと、日本において家族は失われるものではない感覚があるのかもしれない。いや実際には完全な勘当はあるし失う時には簡単に失われる。ただ、個人主義的価値観の中のそれとは、やはり重さや意味合いが違うのかもしれない。仕事も家族も、失うとなったら、完全に失う。そのシビアさの感覚に、違いがあるのかもしれない。そこのところを、ちょっと考えてみたくなった。

「執行者の余地が大きくなる」 小沢代表が秘密法を批判

2013年12月20日 Henri Kenji OIKAWA 0

 小沢一郎「生活の党」代表は12月19日に早稲田大学(新宿区)で開かれた講演会で「特定秘密保護法」について 「秘密保護法はひじょうに雑で乱暴な内容。日本では官僚の力がものすごく大きい。執行者の裁量の余地がたいへん大きくなる。働いている人は分かると思いますが、税務署だってそうでしょ。」 「何が特定秘密か分かりません。犯罪の構成要件も非常に大雑把。ですからケチをつけようとすれば何でも有りに。~今でもお役所の判断次第で国家権力を背景にして権力行使が可能な日本だが、更に治安維持法より酷くなる」  と述べ、同法廃止に向けて全力を傾注すると決意を明らかにした。